2026年10月10日(土)

山師の手帳~“いちびり”が日本を救う~

2026年10月10日

「京都人だけが特別」という意識を捨てるとき

 最後に、京都の一部には「京都人こそ本当の市民であり、外から来た人は一段下」という、古い特権意識が残っているように感じる。これは筆者の印象であり、京都市民全体に当てはまる事実として確認されたものではない。長く住んでいることや、京都市内に住所があることだけを理由に、京都に通い、学び、働き、支えている人々を外側に置くなら、それは京都の懐の深さとは相いれないと私は考える。

 しかも、京都人は京都人同士でも、洛中か洛外かという線を引いてきた。下鴨神社の近くに住んでいても、お土居の外だから洛外。こうした語りは地域文化や個人の認識に関わるもので、洛中・洛外の範囲を一律に定める公的な運賃区分ではない。そんな話を聞けば、他地域の人には「そこまで細かく分けるのか」と笑われるかもしれない。だが、京都人にとっては、その線が妙に気になる。

 この笑い話は、京都人の了見の狭さを示すだけではない。線引きには、制度上の合理性だけでなく、人の感情や誇り、長年の記憶まで入り込むということを教えてくれる。だからこそ、行政が「市民」と「市民以外」の線を引くなら、単に住民票を確認すれば済むと考えてはならない。線の外側に置かれた人が、どのように感じるのかまで想像する必要がある。

 京都は、特定の人だけの所有物ではない。歴史と文化を守ってきた市民への配慮は必要だが、京都を訪れ、学び、働き、愛し、支えてきた人々の存在もまた、今日の京都を形づくっていると私は考える。

「京都は日本人の心の故郷」と表現されることがあるが、これは文化的な評価や比喩であって、客観的に検証できる事実ではない。だからこそ、誰かを排除する京都ではなく、日常を守りながら訪れる人も受け入れる京都であってほしい。市民と観光客を対立させるのではなく、京都に関わるすべての人が納得できる制度をつくること。そのためには、理念だけでなく、対象者の認定方法、本人確認の負担、導入費用、運用体制、効果検証の手順まで公開する必要がある。

 まずは通勤・通学定期券と月額上限制度を対象に、既存の交通系ICカードを活用した実証実験を始める。次に、混雑路線や観光時間帯で観光パス、シャトル、荷物対策を試し、データを比較する。その結果を市民、通勤・通学者、観光客、交通事業者に示し、意見を聞いたうえで本格導入の可否を判断する。こうした段階的な手順こそ、実行可能性と公平性を両立させる道である。これは筆者の提案であり、現時点で決定された実施手順ではない。

 京都人同士でさえ、洛中と洛外の線にこだわる。だからこそ、京都市には、線を引くことの難しさを誰よりも理解してほしい。線引きは必要な場合もある。しかし、その線が人を分断するものではなく、混雑を減らし、日常を守るための納得できる仕組みでなければならない。

 それが、世界から愛され続ける京都への、最も確かな道ではないだろうか。

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