2026年10月13日(火)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2026年10月13日

 ただし、仮にプーチンが動員(あるいは名称を異にする他の方法)によって数十万人規模の兵員を追加したとしても、戦況の急転は期待できないだろう。

 あくまでウクライナ側の数値であるが、ロシア軍は本年に入って1㎢を占領するごとに316人の死傷者を出している(昨年は120人)。これを300人の死傷者として単純計算すれば、残りの地域を占領するために120万人の死傷者を出さなければならないことになる。これが140万人とも言われるこれまでの死傷者数に加わるので総数260万人というとんでもない数になる(負傷者の一部は重複し得るので、実際にはこれより多少少なくなる可能性はある)。

 これだけの生産年齢人口の損失にロシア社会は耐えられるだろうか。ロシア側の戦い方に抜本的な改変がない限り、全域占領は遠い目標ということになる。

2.ウクライナによるモスクワ等への大規模攻撃について

 ウクライナは、プーチンが議会選挙で「筋書き通り」の勝利を収めたまさにその日、9月20日にモスクワ周辺だけで少なくとも450機、ロシア全土では1600機以上という、過去最大規模のドローンやミサイルを同時投入する「飽和攻撃」作戦を実行した。その結果、モスクワ州の燃料の3割以上を供給するモスクワ製油所が停止に追い込まれ、人身被害も出ているようだ。

 ウクライナによる戦い方の変遷という観点で見れば、今回の攻撃は、ロシア軍がこれまでウクライナ全土への攻撃で行ってきた飽和攻撃の手法をウクライナも使うことができるようになったことを意味する。ロシアはこれまで、ドローン、巡航・弾道ミサイルなどを同時に使い、まず大量のドローンでウクライナ側の防空システムを消耗させて迎撃能力を削ぎ、続いてミサイルが飛来して標的を正確に攻撃する、というやり方をとってきた。今回のウクライナの戦い方はこれを踏襲したもので、複数の種類に及ぶ長短さまざまなドローン、巡航ミサイル、弾道ミサイルなどを組み合わせて、同様の効果を狙ったものだ。

 このことは、3重の厳重な防空体制を敷いているモスクワ周辺においても、この数のドローンによる飽和攻撃には耐えきれないことをも示した。今後、ロシアは特にモスクワ周辺の防空を一層強化しようとするであろうが、それは他の地域の防空に隙間を作ることになる。


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