「どこから来たか」だけでは分からない
他の東南アジア諸国でも、シンガポールは統計上、主要な投資元となっている。例えば、タイでは2025年の外国企業投資認可額でシンガポールが2年連続で首位となり、そのシェアは約4割に達した。だが、タイ投資委員会(BOI)は、2024年にシンガポールを投資元として申請された投資のうち、7割は中国企業、1割は米国企業によるものだったと明らかにしている。
ベトナムでもシンガポールは投資元としての存在感が大きい。2025年まで6年連続で首位となり、同年の認可額に占めるシェアは24%と、中国、韓国のシェアを大きく上回った。ただし、これも直接投資元による順位である。最終投資元別の統計がなければ、シンガポールを経由した第3国企業の投資がどの程度含まれるのかを読み取ることは難しい。
投資主体を可視化する意義
外国企業による投資の実態を把握するうえで、資金が直接どの国・地域から流入したかだけを見ることの限界は明らかである。統計上の直接投資元の国・地域と、最終親会社が所在する国・地域とが一致しないケースは少なくないからだ。
こうした問題を踏まえ、経済協力開発機構(OECD)は、対内直接投資残高について、直接投資元の国・地域別の統計に加え、最終投資元の国・地域別の統計を作成・公表することを勧告している。日本でも、対内直接投資残高を、最終的に支配する親会社の所在国・地域別に再集計した参考統計が公表されている。米国や英国などでも関連統計は整備されてきた。もっとも、通常の直接投資元別の統計に比べれば、利用可能な国・年次はなお限られているのが現状だ。
MIDAが公表しているのは実行済みの投資額ではなく、外国企業による投資の認可額だ。それでも、直接投資元と最終投資元を併記することで、シンガポールなどを経由する案件の背後にいる企業の所在国・地域が見えてくる。
地政学リスクが高まり、供給網の再編が進む現在、どの国・地域に最終親会社を置く企業が、どこを経由して、どの産業に投資しているのかを把握する意義は大きい。外国投資を見る際には、「どこから来たか」だけでなく、「最終的に誰が投資しているのか」にも目を向ける必要がある。
