健康保険組合を圧迫するメンタル傷病手当金
筆者はすでに連載『医療神話の終焉―メンタルクリニックの現場から』で、メンタルクリニックの休職ビジネスが傷病手当金中の「精神・行動の障害」の異常な増加をもたらしていることを指摘してきた。協会けんぽの「現金給付受給者状況調査」によれば、25年10月の傷病手当金は19万3435件、そのうち「精神及び行動の障害」が41.27%を占めた。単純計算すれば約8万件である。
98年には約5500件で、四半世紀余りで十数倍である。しかも50歳未満では、傷病手当金の原因の半数以上を精神・行動の障害が占める。
協会けんぽ同様の事態が、健康保険組合連合会でも生じているはずである。企業健保が傷病手当金中の「精神・行動の障害」の実態をどこまで把握しているか不明だが、各健保は、自らのデータを見なければならない。
精神疾患による傷病手当金の件数、平均支給期間、年齢層、職種等を、年次推移とともに示せば、そこに異常な現象が発生していることに気づくであろう。
傷病手当金は「退職給付金」ではない
傷病手当金の中の「精神・行動の障害」の増加は、すべてが純然たる「こころの健康」問題に由来するわけではない。職場にパワハラ、過重労働などの労務問題があり、それを母体企業が健康問題へとすり替えて、責任を健保組合に転嫁している可能性がある。この点は、本連載でも何度も取り上げている。
特筆すべきは、傷病手当金中の「精神・行動の障害」が、いわゆる「退職給付金詐欺」の温床となっている可能性である。そもそも「退職給付金」という名の給付金はない。申請サポート業者たちが、失業保険と傷病手当金を包括して、そう呼んでいるだけである。
傷病手当金は、業務外疾病等で労務不能となった労働者のための、一時的な生活保障を目的としている。退職時の「功労に対する給付金」ではない。
