2026年10月15日(木)

医療神話の終焉―メンタルクリニックの現場から

2026年10月15日

国民生活センターは警鐘を鳴らしている

 厚生労働省、消費者庁、国民生活センターは、25年12月に共同で「失業保険の金額・期間を増やせる?という申請サポートに注意!」というアナウンスを行っている。それによれば、「申請サポート」を行う民間業者が「退職給付金の受給額を増やし、受給期間も延ばせる」とうたって、トラブルを発生させているというのである。

 具体的には、「『○○万円受け取れる』といった広告を信じてサポート契約を結んだものの、実際には受給額が増えなかった」、「途中で解約したいと申し出ても事業者が認めなかったり、高額な違約金を請求されたりする」などだが、傷病手当金関係で看過できないのは、不正受給への誘導である。国民生活センターが発している資料に以下のような事例がある。

【事例】失業保険のサポートをうたう事業者と契約したが、詐欺にならないか不安
 SNSで失業保険のサポートをする事業者を知った。退職を考えていたため登録した後、話を聞いたところ、「最短で1か月後には傷病手当が出て、失業給付も10か月間に延長できるようにサポートする」と言われ、サポート費用として約20万円をクレジットカードで支払った。
 翌日、サポート内容について説明を受けたが、退職日までに事業者が指定したオンライン診療のメンタルクリニックを受診し、うつ病との診断を受けたら、すぐに仕事ができないという内容の書類をハローワークに提出する、というものだった。うつ病と診断されるためのマニュアルも送られてきた。私はうつ病ではないと思う。このようなやり方は詐欺にならないか。 (2024年9月受付 30歳代 女性)
(国民生活センター 2025 失業保険の金額・期間を増やせるという申請サポートに注意(報道発表資料))

常態化する退職直前受給開始

 誤解を恐れず踏み込んで言えば、まるで、詐欺であるかのような傷病手当金受給が横行するのは、100年前にできた制度が改正もされないまま老朽化し、結果として目的外使用を誘うような作りになっているからである。

 傷病手当金制度は、開始された当時の対象傷病は、工場労働者・身体労働者の外傷・急性疾患であり、短期の支給を想定していた。メンタル疾患で使われることを想定していない。

 職場の人間関係の問題を、本来、労務・人事問題として扱うべきなのに、メンタルヘルス問題に転換することが慣例化した。その結果、傷病手当金の精神疾患が激増した。

 現行の傷病手当金制度には、数々の欠陥がある。一例は、一定の条件がそろえば、退職後も支給開始日から通算して1年6カ月継続受給可能となる点である。これでは、制度そのものが退職直前の社員を誘惑して、メンタルクリニックを受診せよ、診断書をもらえ、傷病手当金を受給せよと、そそのかしているようなものである。

 いうまでもなく、精神障害とは、退職を決めた労働者が、業者の勧めに従って、自ら選択するものではない。自発的な意思の結果として自己申告する精神障害とは、詐病以外の何ものでもない。


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