2026年10月21日(水)

Wedge OPINION

2026年10月21日

 ロシアも、電波妨害に強い光ファイバー操作のドローンを導入し、ドローン集団「ルビコン」を創設するなどして、戦場の新しい実態に適応を進めていった。それでも、前進はわずかで、ウクライナは崩れなかった。25年からはトランプ大統領に働きかけ、米国のウクライナ支援を引きはがそうとも試みたが、欧州諸国がより多くを担い、ウクライナへの支援は尽きなかった。

軍事作戦の成果は不足
モスクワに返ってきた損害

 このように成功を望みがたい戦争をロシアが続けていく間に、ウクライナは必死の努力を積み上げ、欧州全体の防衛を最前線で担い、域外パートナーの安全保障にも貢献できる、最新鋭の戦闘国家に変貌していった。ウクライナは前線での無人機利用の場面を増やし、部隊編成や訓練の体制も改善した。ロシアは毎月3万人の死傷、2万7000人の徴募ともいわれ、減衰局面に入った。

 ドネツク州の主要都市クラマトルスクの南に位置するコスチャンチニウカを、ロシアは今年7月3日に制圧したと述べたが、9月末にもウクライナは明け渡していない。北東の防御拠点リマンにもロシア軍は迫ろうとしてきたが、ウクライナ軍は側面を突いて後退させた。

 そしてウクライナの長距離打撃能力はどんどん向上し、持続的な打撃をもたらすようになり、6月にはモスクワの製油所を爆破した。その後はエネルギー施設や物流倉庫の拠点が継続的に叩かれて、ガソリンが供給不足に陥り、物流が障害を受ける事態が常態化した。

 ロシアの大都市の住民にとって、「ほかの誰か」が戦いに行っている軍事作戦から、自分たちの物価、物資供給、生命財産への損害が可視化される戦争に変化してきている。4月、ロシア共産党のゲンナジー・ジュガーノフ党首は適切な経済運営をしなければ1917年の革命時のような事態になると述べ、5月にはレナト・スレイマノフ議員がロシア経済を守るために早期の戦争終結を求めた。

 客観的に見れば、プーチン大統領はこれまでの軍事作戦で目標の達成を見込めず、損害を増やし続けている。もし、戦争継続への期待よりも、ロシア国民の大規模な離反への恐れが大きくなれば、戦闘を終わらせることが有力な選択肢になる。

 しかしここまで失敗を重ねて、これまで140万人ともいわれる死傷者を出したすえに作戦を未達成で終えるならば、必ず勝つことを保証してきた強力なリーダーに疑義がつきつけられ、自らの地位に深刻な危険をもたらし得る。そんなリスクを取るくらいであれば、失敗を成功に塗り替えられるような劇的な打開策、例えば核兵器の使用のほうが、魅力的な選択肢に見えてくるかもしれない。西側諸国でロシアによるエスカレーションの懸念がたびたび議論されてきたのは、このような事情による。


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