2026年10月22日(木)

巨大災害時代を生き抜く

2026年10月22日

豪雨災害の教訓を生かした
雨水貯留施設整備

 剣地さんが26年前との違いとして驚いたのが、水が引く速さだった。この背景にあるのが、名古屋市が進めてきた「緊急雨水整備事業」だ。

 東海豪雨を契機に01年度から24年間で約2000億円を投じ、1時間に60ミリの降雨に対応するための雨水を一時的にためる施設や排水ポンプ、雨水管などの整備が進められてきた。名古屋市上下水道局下水道計画課の村上勇作さんは、これまでの整備についてこう説明する。

 「東海豪雨以降、浸水被害が大きかった地域や都市機能の集積する地域を対象に対策を進め、その後も計画を見直しながら整備を重ねてきました。今回の豪雨では、調整池全体の9割を超える約73万トンの雨水を貯留しましたが、これまでの整備が一定程度、機能したと考えています」

 地震工学が専門で名古屋大学名誉教授の福和伸夫さんは「行政が地道に整備を進めてきた成果の表れ」と評価し、「もの作りの街である名古屋では、工場が浸水すれば地域産業に大きな影響が出る。こうした危機意識や地域の産業構造も手伝ったのかもしれません」と分析する。

 名古屋市では、19年度に「名古屋市総合排水計画」を改定し、現在も整備を進めているが、それには長い年月と多額の費用を要する。村上さんは、行政による対策と同時に一人ひとりの備えも欠かせないと話す。

 「大規模な豪雨に対して、行政の対策のみで被害を完全に防ぐのは困難です。住民の皆さんにも、雨水ますの清掃や家庭への雨水タンクの設置など、身近なことから浸水への備えを続けていただきたいと思います」

突き付けられた都市の脆弱性
今後必要な対策とは

 過去の災害経験を生かしてインフラ整備を進めることは重要だが、全ての自治体が災害対策に巨額投資できるとは限らない。財源確保が難しい自治体は、その多くを国からの補助金に頼らざるを得ないが、災害対策と表裏一体である財政の課題をどう考えるべきか。慶應義塾大学経済学部教授で財政学者の土居丈朗さんは、「国からの補助金を地方都市に十分に行き渡らせるために、政令指定都市などの大都市は、まずは自主財源で賄う道を探るべきで、そのために個人住民税の均等割を活用するのも一案だ」と話す。

 個人住民税の均等割とは、所得にかかわらず住民税に定額の負担を課す仕組みだ。最近では、東日本大震災の復興財源確保のため、14年度から23年度まで全国一律に均等割の上乗せ措置がなされてきた。

 「独自の追加課税を実施する余力がある大都市は、災害対策のための財源負担を住民に求める姿勢も重要です」(土居さん)

 都市型水害に対する一定のインフラ整備は不可欠だが、雨量が下水道排水処理能力を上回る今般の内水氾濫の事例を見ると、ハード面の整備だけでは限界だと言わざるを得ない。


新着記事

»もっと見る