2026年10月21日(水)

新しい〝付加価値〟最前線

2026年10月21日

搬送は魔法瓶で!?

タイガー魔法瓶製セル(細胞)ポッド。 女性に人気のスープポッドに似る。 QRコードで、履歴、内容物を明確にすることができる

 コロナ禍の時、コロナワクチンをどう運ぶのかが問題になったことを覚えている人も多いだろう。最後、一番使われたのは、ツインバードのスターリング冷蔵庫を装備した輸送システムだった。スターリング冷蔵庫は、高効率、小型、軽量だが、冷蔵庫というのはとにかく電気喰い。夏場、エアコンの電気代が問題になるが、冷蔵庫の電気代もバカにならない。エアコン、冷蔵庫、照明。これが家庭の消費電力トップ3だ。

 培養した細胞は、コロナワクチンのように、零下でないとダメになるというものではない。ただ低温をキープすることが必要だ。

 2017年JAXAは宇宙からの実験サンプルを持ち帰るために、大気圏突入しても温度が上がらず、衝撃に強い容器を欲し、ある大阪のメーカーに声をかけた。「タイガー魔法瓶」だ。

 日本は、これでもかと言うくらい、魔法瓶メーカーが多いが、誰でも知っているのは、「虎」と「象」。双方とも大阪の会社である。そしてこの2社、炊飯器などでも有名なのだが、頑なに「魔法瓶」を社名に付け続けている。ある意味、職人魂が感じられる。

 そして、見事に成功させるのだが、唯一無二のサンプルの輸送容器を任せられるとあり、そのプレッシャーはすごかったろう。人気アニメ「機動戦士ガンダム」でも、大気圏に単機突入を強いられたガンダムの様子は、丁寧に描写されている。

 それはさておき、JAXAの成功を知り、タイガーは再生医療の輸送プロジェクトに参戦を求められることになる。

6本の検体を入れたところ。周囲を保温材で囲む

 JAXAの時より、条件は緩和されているとはいえ、患者にとっては、未来につながる培養細胞。温度変化でダメになりましたなどという、言い訳は絶対できない。JAXAの時といい、「唯一無二のサンプル」を「安全に」運ぶという難題によく耐えていると思う。命題が変わると、気を付けるところが一変する。製品自体も大切だが、何に使うのかで、使う時に注意すべきところは変わってくる。

 その上、輸送方法もかなり違う。軽いので、人が持って運ぶ。クルマだと渋滞などで時間を計れないが、日本の鉄道インフラだと、時間通りに輸送することができる。クルマで輸送するのと全く違う。運び手は、これらを司る「ガウディ・クリニカル」の社員となる。

期待される成果

 もう一つ、ガウディ・クリニカルで感心したことがある。資本準備金も入れて、数億円。著名な会社が並ぶ。医は仁術という言葉があるが、今の世の中、金がないとなにもできない、逆に言うと、それだけ期待されているし、軌道にのったあとは、投資回収が見込めると言うことだ。

 実用化は27年予定。来年だ。もし狙った通り、上手く行き、保険適用になったら、未来が変わる。

 ただ、今回使われるのは、脂肪幹細胞を使うもので、歯周組織再生を促す自己脂肪治療、変形性膝関節症(1次性)を対象とした自己脂肪組織由来幹細胞治療。iPS細胞はその先にある。

「不治の病」はなくなるかも知れない。

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