トランプ大統領が最後に頼ったのは、ロシア・プーチン大統領だった。10月9日にプーチン大統領との会談の結果、ロシアが米国を含めた市場に、ただちに30万トン、11月に50万トン、その後100万トンのディーゼル油を輸出することに合意したと発表した。
世界で使用されるディーゼル油は、一日当たり2千数百万バレル、米国だけでも300万バレルを超える。30万トンの軽油は2百数十万バレルに過ぎず、市場にはほとんど影響を与えない数量だ。
ロシアはディーゼル油の輸出を禁止しているが、近隣の同盟国には出荷しており、その量は、9月には58万トン、10月72万トンだ。要は、新たに市場に追加でディーゼル油が供給されるかも不透明だ。
ウクライナのドローン攻撃により、ロシアの製油所は損傷しているので精油量も大きく落ち込んでいる。トランプ大統領は、ウクライナの製油所の攻撃を停止させるべく両国はエネルギー設備への攻撃中止に合意したと発表したが、守られるはずもなく、両国共にエネルギー設備への攻撃を続けている。
10月14日にウクライナが利用しているイーロン・マスクのスペースXが運用する軍事用スターリンクの利用に制限がかかった。イーロン・マスクは、米軍が管理しているのであずかり知らぬと答えたが、イーロン・マスクが提案し、トランプ大統領に持ち掛けたとの内部情報も報道された。
トランプ大統領は、ロシアに加担する路線を続け、さらなる制裁の緩和も打ち出した。
ロシアからのディーゼル油輸入と制裁停止に呆れる議員
米国内のディーゼル油価格が上昇した主な原因は、イラン戦争によるものだ。ロシア産ディーゼル油の輸出が再開されても、価格が下落する余地は小さく、効果は非常に限定的だ。
それよりも、米国大統領が欧州の「同盟国」を裏切りロシアを支援するのは、米国への好感度とトランプ大統領への信頼度をさらに下げることにつながる。
米国内でも共和党議員からも、公然と批判する声がでてきた。ロシアとのディーゼル油合意後の10月12日に、共和党4人、民主党2人の上院議員が連名で、ロシアとの合意破棄を要求した。ロシアがウクライナの民間人に被害を出す以上、ロシアへの財政支援をすべきではないというのが、その理由だ。
加えて、議会はロシアからのエネルギーの輸入を22年に禁止しており、大統領が法を無視しているとの指摘もあった。
トランプ大統領は意に介すことはなく共和党議員は本気ではないだろうと発言し、10月16日に、2日後の18日に発効予定であったロシアへの制裁強化のリンジー・グラハム法の停止を大統領令で公布した。トランプ大統領は国益を考慮した措置と説明した。
リンジー・グラハム法の中心は、ロシアからエネルギーを輸入する上位5カ国からの輸入品に最大100%の関税を課することと、ロシアのエネルギーを輸送する影の船団への制裁だ。
ロシアから大量の石油を購入しているインドは制裁に戦々恐々としていたので、当面救われたが、もっとも助かったのはエネルギー収入の減少を避けることができたロシアだ。
