政治面で極右と極左が台頭し中道派が弱体化する中で、いずれの勢力も単独過半数を得ることはできず、統治機能の麻痺が継続するだけでなく、経済面で状況はさらに深刻になる可能性が高い。巨額の財政赤字を緊縮財政や予算削減で対応しようとしたマクロン政権を極右および極左の議会勢力が妨害してきたが、市場ではフランス国債が大量に売られ、今やフランスは欧州の病人と化している。
政府は、資金難から教育改革の要求にも効果的な対応ができず、経済麻痺が治安の悪化を招き、中産階級が極右支持に回り、政治の極右化の懸念がさらに市場を冷え込ませるという悪循環が起きる可能性が高い。
ル・ペン大統領となれば……
ル・ペンが大統領となれば、公約している年金支給年齢の引き下げによりさらに財政の悪化が懸念される他、ウクライナ支援、対欧州連合(EU)政策、対北大西洋条約機構(NATO)政策等について従来の外交政策を覆す可能性が高い。「フランス第一主義」を主張する立場からロシアの安価なエネルギー供給をウクライナの領土保全や安全保障より優先させるかもしれない。
またNATO軍事統合司令部からの離脱によるNATOの弱体化とEUの意思決定を妨害し自国法の優越を主張することによるEUの機能麻痺をもたらし、欧州全体が政治的に分裂し経済的に弱体化し、最大の勝利者はロシアとなる恐れがある。
ル・ペンの勝利が、フランスの内政問題にとどまらず、欧州全体およびグローバルにネガティブな影響をもたらす恐れがある。この様な危機が回避されるためには、来年の大統領選挙で中道派候補が決選投票に進み、これまでのような「共和国連合」(左派、右派、中道派の結束)により極右国民連合候補を逆転することを期待するしかない。
中道派候補が当選したとしても、国内の分裂が継続する限り内政や経済面の停滞から脱することは困難だろうが、大統領権限を行使できる外交の継続性はある程度期待できよう。

