さらに、トランプ大統領は選挙戦の最後の1カ月の間に、自らの威信をかけて、接戦州、特に伝統的な共和党地盤の各州で猛烈な遊説攻勢をかけた。このうち、テキサス州で4回、オハイオ州で3回、カンザス、サウスカロライナ、ノースカロライナ、ジョージア、ミシガン、アイオワ各州でそれぞれ2回ずつ、共和党上院候補のための応援演説を行ったが、結果的に、これら8州すべてで辛酸をなめるかたちとなった。米マスコミの一部には、支持率の低迷する大統領が接戦諸州に出向いたことが、かえってマイナス効果になった、との指摘もある。
今回の選挙結果は、1期目のトランプ政権の受け皿になってきた共和党支持層のうちの2~3割が離反したことが、共和党惨敗の最大要因となったことを裏付けている。
言い換えれば、共和党の“自損”であって、大多数の有権者が民主党を熱烈支持したことを意味してはいない。むしろ、民主党は上下両院を制することになったものの、行く手にいくつかの課題を抱えている。
民主党も抱える深刻な問題
そのひとつは、党そのものに対する国民の評価だ。
米「NBCニュース」が実施した最新の「政党別好感度」調査によると、民主党について「好感する」と回答した人は、29%にとどまり、逆に「好感しない」が52%に達している。政治メディア「Real Clear Politics」の同様調査でも、「好感」が39%、「好感しない」が54%と、マイナス・イメージが定着したままとなっている。
このほか、「Gallup」世論調査会社の調査でも、同党に対する好感度は、共和党をわずかに上回っているものの、43%にとどまっており、不評が過半数を上回っていることに変わりはない。
こうした同党に対するネガティブ・イメージは、2024大統領選挙、議会選挙のいずれにおいても民主党が敗北して以来、今日に至るまで定着してきたといわれており、その背景として、生活費や諸物価高騰などの課題について、統一した対策と魅力あるメッセージを打ち出せないまま、今日まで引きずってきたことが挙げられている。
この点で、深刻なのが、中道穏健派と進歩派との間の内部対立問題だ。今回の中間選挙終盤で、特にそれが露呈し、ちょっとしたスキャンダルにまでなったのが、ミシガン州上院選における醜い”内紛“だった。
民主党予備選段階で勝ち残ったアラブ系で進歩派のアブドゥル・エルサイド氏と、穏健派で敗退したイスラエル支持派のヘイリー・スティーブンス候補が、本選投票日直前まで互いを非難し合う激しい舌戦を演じ、最後はスティーブンス候補が、記者会見で共和党候補への投票意向を表明するという前代未聞のハプニングを引き起こした。結果的に、本選ではエルサイド氏が共和党候補に勝利し、騒ぎは幕引きとなったが、その”余震“は依然、収まっていない。
民主党急進派は、今回の下院選挙でも、ニューヨーク、コロラド、ミシガン、ミネソタなどの各州で当選議員数を着々と増やしており、このうち、リーダー格と目されているニューヨーク州選出のオカシオ・コルテス議員は、知名度を武器に大統領選を目指しているとの観測さえ出ている。
対イスラエル政策のみならず、国民皆保険、教育制度などをめぐっても、若年層を中心とした抜本改革を主張する急進派と、中道路線にこだわるベテラン議員たちとの立場には、大きな溝が立ちはだかったままだ。
