2024年4月20日(土)

Wedge REPORT

2014年11月5日

 これに対して慶應義塾大学の國領二郎・常任理事は「取り立てて数字目標は立てないが、既存の学生交換などを実施している良質な海外の交流パートナーなどを活用しながら、いまある学部を活用して質量とも着実にグローバル化を進める」と述べ、「量」の早稲田に対して「質」の慶應という印象だ。

 この数年は高校生の大学進学率の上昇で、進学する学生数は横ばいだったが、今後は少子化の影響で大幅に減少に向かう。このため全国の大学は魅力のある大学にするよう迫られている。地方の一部の私立大学では既に定員割れを起こしつつあり、学生数減少の影響がじわりと出始めている。そうした中で、海外留学が学生を引き付ける有力な手段となりつつある。

 半年から1年の交換留学の場合、これまでは授業料は免除され、平均して年間50万円前後の奨学金が給付されてきた。文科省が14年度から募集する官民による新しい海外留学支援制度(採用人数300人)では、月額12万~20万円の奨学金に加えて渡航費用が給付されるなど、相当充実してきている。

 これに加えて大学独自の奨学金制度もあり、経済的に苦しくて留学をあきらめるといったケースはなくなりそうだ。

温室育ちの「アームチェア留学」

 留学には大きく分けて、語学研修が主たる目的の3カ月から半年程度の短期のものと、海外の大学との交換留学協定に基づいた勉学目的の1年程度の長期と2種類がある。どれも奨学金が充実し、留学に際しては大学があらゆる面倒をみる。

 留学先で問題が生じた場合には、大学担当者が間に入って世話をしてくれるなど、至れり尽くせりで、大学丸抱えの実態を「アームチェア(肘掛け椅子)留学」という。まさに日本の学生の海外留学はアームチェアに座っているようなもので、難しい問題はすべて関係者が解決してくれる。九州大学の廣瀬武志・教育国際化推進室特任准教授は「『アームチェア留学』はあたかも『温室育ち』のグローバル人材を育てているようにもみえる。これでは自立したタフな人材は生まれてこないのではないか」と実態を危惧する。

 「選ばれた学生が行く海外留学」から「誰でも行ける留学」になることは喜ばしいことだが、それに見合った学力や語学力アップの成果が得られるかどうかが肝心だ。まして税金を使って奨学金補助を行うようになれば、なおさらだ。


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