2024年11月21日(木)

Wedge REPORT

2014年11月5日

留学先で進級できない
学力不足学生の増加

 数を追い求める傾向が強まることで、すでに弊害と思われる事例も表面化してきている。ある国立大学の関係者は「文科省に提出する高い目標数字を実現しようと無理をしている大学がある。語学留学の場合は人数を増やそうと思えば、旅行社と提携すればいい。海外ツアーに送るような感覚でいくらでも人数は増やせる」ともらす。

 質の高い留学を目指している国立大学協会(会長・松本紘京都大学総長)では、今年1月の国際交流委員会でこうした問題点が指摘され、異文化交流・体験を伴った学業アップという当初の目的を必ずしも達成できていないため、同委員会は留学の実態を分析することを決めた。

 関東の私立大学では、数十人単位で同じ大学にまるで海外ツアーに送るようなイメージで留学生を派遣するところもあるという。派遣先では日本人留学生による「日本人村」ができてしまい、大学が期待したほどの成果が挙げられないこともあり得る。留学生の数が少ない現段階では、数を増やすことは重要だが、その手法、内容についても十分点検する必要がある。

 2年ほど前にはカナダのバンクーバーにあるブリティッシュ・コロンビア州立大学(UBC)に派遣された日本人留学生の成績が悪く、多くの学生が進学できなくなるトラブルが発生した。この留学生たちは学力が足りなくて落第、UBCは勉学意欲の低い留学生を送り込んだ日本の大学に対して不信感を持ったようで、留学生の受け入れ拒否という事態にもなりかけたという。UBCは大学の世界ランキングでは31位にランクされ、ノーベル賞受賞者を多数輩出するトップクラスの大学だ。日本からは合計318人(13年末)の留学生を派遣している。こうした事態が起きると、日本の大学の評判を落とす結果につながり、「トビタテ! 留学JAPAN」も逆効果を生みかねない。

 この数年、文科省は日本人留学生増加と並んで、大学のグローバル化を推進するための柱の一つとして外国人留学生の受け入れ人数を30万人にまで増やす目標を掲げた「グローバル30」という政策を実行してきた。この結果、中国などアジア諸国からの留学生が急増し、トラブルが起きている。ある地方の国立大学では、日本語も英語もできない中国人留学生が増え過ぎて、留学生の生活指導で担当教員が忙殺され、授業にも差し支えるほどになった。


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