2024年11月22日(金)

「呟く市長」は何を変えようとしているのか

2014年12月10日

熊谷:千葉市ではそれをできる限り見える化してきました。可視化して、そもそもどういう選択肢があるのか、それぞれどのようなメリットとデメリットがあるのかについて、市政が持っている情報をできる限り提示することで、年貢から共益費に感覚を変えていきたいんです。これをしなければ、これからの時代はとても立ち行かない。地域は自分のものであり、共同財産なんです。

 蜂の巣論争もエアコン問題も、とても良い問題提起をしていただいたと思っています。要望する方の気持ちもよく理解できるので、市民の皆さんも議論にスッと入ってきてくれました。そのような身近なテーマを使って、受益と負担の関係性についての理解を広げたいんです。

 選択肢の提示がもっとも効果を発揮したのは、子どもの医療費助成です。千葉市では子どもの診察一回ごとに自己負担は300円でしたが、東京都内は無料のところも多いので、無料化してほしいと要望があったんです。私は「無料にするとこれだけのお金がかかります。自己負担300円を維持して無料化にかかるお金を投入すると、助成対象を小3から小6に引き上げられます。さらに自己負担額を500円にすると、中3まで拡大が可能です」と説明しました。皆さんまずはびっくりされて、「では小6までのほうがいい」「中3までがいい」とご自分なりの答えを出してくれる。選択肢を提示すると、皆さんが自分自身で考えてくれるようになるんです。そもそも何を求めていたのか、優先順位はどうなっていたのかを考え直してくれるんですね。

 選択肢や情報を開示した結果として、どのような意見が多数派になったとしてもそれでいいと私は思っています。私自身の意見も表明はしますが、議論の結果に従います。子どもの医療費助成についてはそれが実現できました。平成26年度の予算編成の前に、保育所、幼稚園、小学校、中学校の保護者に大規模なアンケート調査をして、その結果にもとづいて中3まで拡大することを決めました。医療費だけではなく、ほかの予算の仕組みについても理解を深められたのではないかと感じています。

 簡易な住民投票のようなシステムを構築できるのならば、そのほうがより良いのかも知れません。でも、このレベルでも私はいいと思っています。質問されて皆さんが答えた結果が、翌年にはダイレクトに反映されるわけですから、十分に機能していると思います。(第2回へ続く)

※千葉市では平成26年8月診療分より、0歳~小学3年生までの通院1回・入院1日ごとの自己負担は300円、小4~中3までの自己負担は通院1回500円、入院1日300円に改定された。

(11月19日(水)千葉市役所内 市長室にて収録)

熊谷俊人(くまがい・としひと)
1978年奈良県天理市生まれ。父の転勤に伴い千葉、大阪、兵庫に移り住む。2001年3月に早稲田大学政治経済学部経済学科を卒業し、NTTコミュニケーションズ株式会社入社。2006年、民主党の市議会議員候補公募に応募、合格。翌年4月の千葉市議会議員選挙(稲毛区)に立候補、当選。さらに2009年に千葉市長選挙に立候補、当選。31歳の市長は当時の全国最年少であり、政令指定都市としては歴代最年少。2013年の千葉市長選で再選される。千葉市中央区に妻と二人の子と暮らす。ツイッターアカウントは https://twitter.com/kumagai_chiba

  
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