11月3日付の米ワシントン・ポスト紙で、同紙コラムニストのファリード・ザカリアは、オバマ大統領は、残り2年の任期で、内政では何もできないだろうから、外交で業績を残すべきである、と述べています。
すなわち、中間選挙での結果にもかかわらず、オバマ大統領はこれからの2年で大きなことを成し遂げるだけの時間と力を持っている。しかしそれは、ワシントンでの政争が及びにくい、国際問題についてである。
外交においてオバマ大統領は、まず、任期初期の断固とした行動ぶりに戻る必要がある。現在のようにシリアやイラクにじわじわと介入を増やしていくようなやり方は、政権の時間と力を浪費するだけで成功をもたらさない。
オバマのこれまでの最大の外交イニシアティブは、アジア重視である。これからの数十年にわたって、世界の平和と繁栄に対する最大の脅威は、シリアの暗殺者たちではなく、中国の台頭にある。
しかし、今のところ、「アジア重視」は言葉にとどまり、現実の変化は少ない。アジア重視における最も野心的な要素はTPPである。これは国家資本主義、保護主義に対抗し、開放的な市場を守るものである。共和党は貿易の問題については大統領に協力するかもしれず、むしろ保護主義的・守勢的立場を取る民主党の方が問題かもしれない。
オバマのもう一つの重要な外交イニシアティブは、イランの核の平和利用に向けた交渉である。米国の基本的な戦略は巧妙だが、大統領が十分な関心を払っていない。米国共和党及びイスラエルのネタニヤフ首相からは、裏切りだとして攻撃されるかもしれないが、米国はイランとの合意を目指すべきである。
実は、サウジアラビアもイランとの関係改善が必要であることを理解している。米国政府が仲介してサウジアラビアとイランの和解が成立すれば、それは中東情勢を根本から変え、イスラム・テロに共同で対処できるようになるだろう。
現在の世界は混乱していて、米国の大統領は守勢におかれているように見える。しかしニクソン大統領とキッシンジャーの時代、米国はアジアに50万の兵力を送りながら、ベトナム戦争で敗北しつつあり、ソ連は上り調子にあった。にもかかわらず、ニクソン・キッシンジャーは、ベトナムでは不利な和平を呑むかたわら、ソ連との戦略核限定交渉に合意し(SALT I)、中国との関係改善、中東和平工作という業績を上げた。