08年には、太陽光発電設備を屋根設置型と事業用に分け料率を変え、さらに買い取り価格を3割減額した。09年には、太陽光発電設備の事業者に設備の50%以上について供給契約が締結されていること、投資額の50%以上について資金手当てがなされていることなど様々な条件を付けた。
10年には、太陽光、風力、太陽熱発電設備について、買い取り価格が引き下げられ、買い取り対象時間に上限値が設けられた。さらに、送電網の接続費用の引き上げが行われた。12年1月には新設設備へのFIT制度の適用中止が発表され、全ての販売電力量に対し7%の新税が導入された。
13年2月にはFITよりも事業者に有利とされた市場価格への上乗せ制度が廃止され、消費者物価指数での調整制度が見直された。7月にはFITが遡及し廃止されることが発表された。事業者はFITに代わり、その資産に対しスペイン国債の利率に3%をプラスした税前収益を保証されることになった。収益率は税前7.5%、税引き後5.5%とされたが、遡及での廃止に対し事業者からは訴訟が相次ぐことになった。
あまりに大きな再エネ政策の負担額
消費者の負担額を軽減していたにも拘わらず、スペインの家庭用と産業用の電気料金は値上がりを続け、14年前半の時点でそれぞれ1kW時当たり22.5ユーロセント(34円)と15ユーロセント(23円)に達している。図-2の通りだ。消費者が負担すべき額が上乗せされていれば、電気料金はさらに上昇していたはずだ。
スペインの2013年の電源別発電量は図-3の通りであり、風力20.2%、太陽光3.0%、太陽熱1.7%になった。この発電量のために使われた補助金額は年間80億ユーロ(1兆2000億円)を超えており、国内総生産額の約1%に相当する。12年の段階で、再エネ導入のために使われたが、消費者から回収されていない金額は260億ユーロ(3兆9000億円)に達していた。何も対策が取られない場合には、13年だけで、さらに105億ユーロ(1兆5800億円)が積み上がるとみられていた。
スペイン政府は、この金額を縮小するために税の導入、接続費用の増額などの措置をとったが、今後発生する未回収費用と今まで累積している赤字額を解消するために、今後電気料金あるいは税金の形で、消費者の負担が増えていくことになる。