2024年4月20日(土)

経済の常識 VS 政策の非常識

2014年12月24日

 増税すれば財政再建できると考えている人が多いようだが、まず、増税してもそれを使ってしまっては財政再建できない。財政再建のためには税収を上げるとともに、歳出を抑えなければならない。当たり前のことだが、財政再建のために、第1に必要なのは増税することではなくて、歳出と歳入の差、財政赤字を小さくすることである。

増税だけでは無理

 ところが、増税派には公共事業増額や社会保障の充実が好きな方が多いので、増税すると歳出も増えてしまい、本当に財政再建に資するのか疑問な場合が多い。特に、高齢者向けの社会保障支出の拡充は問題である。子育て支援であれば、子どもの数は減っていくから、今年勘定が合っていれば将来は黒字になる。しかし、高齢者は増えていくのだから、今年勘定があっても将来は赤字になる。

 第2に、財政赤字の額それ自体よりも、それを名目GDPで割ったものが重要だということである。同じ額の借金でも、所得の高い人にとっての意味と低い人にとっての意味は異なる。これも当然のことだが、増税によって不況になり、名目GDPが減少すると、少しも財政再建にならないことに気が付かない人が多いのは不思議である。

 第3も当たり前のことだが、借金というのはストックであって残高だから、財政赤字よりも、それを累積した債務残高が重要だということである。もちろん、財政が黒字であれば、長期的には債務残高が減っていくから、財政収支が重要だというのはその通りだが、財政収支だけでは名目GDPの動きが分からない。

 さらに、財務省の発表している財政赤字は、債務の返済も政府の歳出に入れているという問題がある。これは、住宅ローンを繰り上げ返済したら家計の債務状況が悪化するという指標を用いているのに等しい。こんな指標を用いている国は日本しかない。債務残高であれば、このようなことは生じない。歳出から債務償還費を除いた純歳出と歳入の差、純歳出歳入差に注目すべきである。

 財政状況は、政府の債務残高の名目GDPに対する比率で見るのが望ましい。この比率が長期的に低下していくことが確実になれば、財政は再建されたと言えるだろう。当たり前だが、財政再建のためには、分母の名目を大きくし、歳出を抑え、歳入を増やすことである。まず、分母と分子の関係を考える。


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