解散総選挙は、アベノミクスへの評価という形で欧米でも関心を集めています。その中でも、フィナンシャル・タイムズ紙は、社説、論説、分析記事を掲載し、様々な角度から評価や分析を行っています。分析記事では、アベノミクスが株の上昇と円安を招いた結果、これまで日本では欧米ほど顕著でなかった所得の不平等が進んだ、と解説しています。また、元BISの経済顧問ウィリアム・ホワイトの論説は、円安、低い国債の利回り、そして一般家計の高貯蓄率という好条件が消え、資金調達コストがかさみ、赤字がさらに増えるという悪循環を生むおそれがあり、債務削減を優先させるべきであると述べています。
その中で、この社説は、政治経済的環境の悪化や支持率の低下にめげず、自信を失うことなく、より大胆に前進せよと、さらなる施策も提案しています。施策そのものは目新しいものではありません。また、焦点を生産者から消費者、大企業から労働者に移せと言っていますが、アベノミクスの一環としての円安が招く消費者への負担との矛盾をどう解くかといった解説がありません。しかし、「アベノミクスは失敗ではないか」といった論調が目立つ中、安倍政権にとって励みとなる社説です。
アベノミクスへの関心は、政治・経済実験としての興味、世界経済に影響を与える世界第三位の日本経済の行方の心配だけではありません。ユーロ圏で日本と同じように長期的な経済停滞とデフレが予測されるため、デフレ脱却と財政均衡という相矛盾する目標をいかに達成するかという手綱さばきが大いに注目されているのです。
なお、総選挙の結果は、安倍総理にとって政治的環境を大いに強化し、アベノミクス推進の大きな力となるといって良いでしょう。
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