2024年4月19日(金)

患者もつくる 医療の未来

2015年1月7日

 実際にこの制度が、医療の質にどのような影響を与えるかにについては、多くの原因分析結果の報告書を元に、これからも毎年1回発行されていく「再発防止に関する報告書」の内容が今後どのように変化していくかを見ていくことで、やがて明らかになるでしょう。ただ、この制度が始まる前の、原因分析をしていなかった時代との比較は、もちろんできないわけです。

※「再発防止に関する報告書」の内容については、『妊婦さんとその家族は必見 ~産科医療事故「再発防止に関する報告書」のポイント~』の『(前篇)安全なお産のために「陣痛促進剤」について知っておこう』『(後篇)「子宮破裂」と「クリステレル」の事故例から分かったこと』をご覧下さい。

(原因4)この制度がまだ十分に認知されていない。

 この制度は、原則的に1歳の誕生日以降から申請が可能になりますが、その際には、保護者が、子どもが生まれた分娩機関に連絡し、「補償申請を行うために必要となる書類一式を運営組織から取り寄せてほしい」と依頼しなければいけないことになっています。また、小児科の診断医に対して、子どもの脳性まひ等の状態について診断書を書いてもらう依頼も、保護者自身がしなくてはいけないことになっています。そして、書類一式の記入を終えて、申請する際も、保護者から直接ではなく、分娩機関を通じて申請しなければいけないシステムです。

 しかし、1歳の誕生日の頃には、通常、子どもは産科ではなく小児科にかかっているはずですので、保護者がこの制度についてよく知らない場合、申請を依頼し忘れてしまう可能性があります。小児科の医師も、まだ、この制度の診断書を記入した経験などがない場合、保護者に補償申請を促すことをうっかり忘れてしまっている可能性もあります。

 実際、産科医療補償制度の運営組織が、あらゆるメディア媒体を使ってこの制度の周知を広報した時期には、急に申請数が増えたということです。このことは、今も、この制度をよく知らないために申請し忘れている人がいる可能性があることを示唆しています。

医師に対象外と言われてもコールセンターに電話を

(原因5)医師が「補償対象外」と決めつけて申請してくれない。

 より深刻な問題は、保護者がこの制度を知っていて、子どもが生まれた分娩機関に連絡をしても、医師が「対象外だ」と言って、申請手続きをしてくれない場合です。

 産科医療補償制度の運営組織は、2013年8月に、一般的に補償対象外とされている「分娩中の異常や出生児に仮死状態ではない場合」でも、「先天性の要因がある場合」でも、「新生児期の要因がある場合」でも、それぞれ、審査委員会で補償対象と認められた例があるとして、18の具体的な事例の内容を付して、全国に周知する努力もしています。(2013年9月20日開催の運営委員会の会議資料中の「参考資料3」)。例えば、先天性の要因があった場合でも、分娩児の要因によって、脳性まひの重度がさらに増した、と考えられるケースなどは、補償対象となりえます。


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