つまり、補償対象となるかどうかは、あくまでも、産科医療補償制度の審査委員会が個々に判断するのであり、申請前に現場が独断で判断してしまわず、少しでも可能性があれば申請してみてほしい、ということなのです。
この制度が始まるまでは、出産時の要因で子どもが脳性まひになって原因分析や再発防止を願う場合、保護者は訴訟するしか方法がありませんでしたが、医療側に過失が認められた訴訟案件の多くで、医療側は、当初「先天性だった」という主張をしています。つまり、分娩機関は、脳性まひの原因について、保護者に「先天性だ」と説明してしまいがちだということです。
本当に先天性と言い切れるかどうかは、複数の専門家に客観的に見てもらわなければわからない場合があります。また、この制度では、対象となった全ての脳性まひ事例の原因分析がされていますが、あまりにも分娩時のデータや記録に不備があることが指摘される事例も少なくありません。申請をすることで、そのような指摘がされれば、事故の再発防止や医療の質の向上にもつながっていきますし、そのような事例こそ、現場の医師に判断をまかせてしまわずに、申請してみるべきです。
実際に、保護者が分娩機関から「対象外なので申請できない」と言われたけれども、保護者が産科医療補償制度の運営組織のコールセンターに電話をして、運営組織の方から分娩機関に対して「対象となるかどうかの審査はこちらでやるので、一応、申請書類を保護者の希望通り出してほしい」と電話をして申請をしてもらい、審査の結果、対象となって補償されたという事例が、既に5件以上あるとのことです。
産科医療補償制度のコールセンターの電話番号は「0120-330637」(平日の9時~17時)です。
医師から「対象外なので申請できない」「申請しても無理だと思う」というような説明を受けていても、十分に納得できない場合や、少しでも可能性があるを考えられる場合には、コールセンターに電話をして、制度の運営組織の仲介のよって申請をしてもらい、審査委員会できちんと審査をしてもらいましょう(また、審査の結果に不服がある場合は、不服審査請求の制度もあります)。
もし、知人に、重度の脳性まひの子どもを育てているのに、まだ、申請をしていない人がいれば、このことをぜひ伝えてあげて下さい。
産科医療補償制度のホームページは下記です。
http://www.sanka-hp.jcqhc.or.jp/
このページで、申請の手続きの詳細などがわかるほか、制度創設のための議論がされた「準備委員会」や制度見直しのための議論がされた「運営委員会」の議事録等も、上記ページの「資料集」の欄の「委員会資料」から読むことができます。また、この「資料集」の欄からは、「原因分析報告書」や「再発防止に関する報告書」なども読むことができます。
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