エンジェル投資家と起業家が接触する「angel.co」というサイトもある。投資家は誰がどの会社に投資をしているかが分かり、起業家はここで自身の取り組みを売り込むことができる。エンジェル投資家の支援を受けて成長した企業は、宮田さんのようなベンチャーキャピタルからの資金を得てさらに成長して、上場したり、大企業に買収されたりする。マネーは稼いだ人から、必要とする人へ循環していく。
意外に感じるかもしれないが、シリコンバレーは人脈(コネ)がモノを言う世界で、例えば、「angel.co」で投資家が注目するのは、どんな人が投資をしているかなのだという。「この人が投資しているということは、将来性があるのかもしれない」と判断される。
また、「ソーシャル・プルーフ(社会的証明)」といって、会社を辞めて起業しようとする人に対して、元の上司が「この人物は優秀である」とお墨付きを与えることもよくある。日本では会社を辞める元部下にそんなことをする上司は多くはないだろう。
さらに、宮田さんのようなベンチャーキャピタルも人脈の一部だ。シリコンバレーでは年間約5000社が起業するが、宮田さんはそのうち1000社程度と接触する。投資ばかりではなく、スタートアップの事業に適した人材を紹介することもベンチャーキャピタルの役割だ。
起業家に対する日米の意識の違い
そもそもシリコンバレーのような町を日本に作ることは可能なのだろうか。起業家と、それを支援するアクセラレーターやメンター、投資家が必要になる。そればかりではなく、シリコンバレーやサンフランシスコでは、起業家が投資家や同業者の前で事業計画を発表して投資を得るという「ピッチイベント」が毎晩のように行われている。とあるピッチイベントに行ってみると、5分間という短い時間で起業家たちは懸命に事業のプレゼンを行い、出席者も耳を傾けていた。