今回、取材で訪ねたハードウェア・スタートアップの製品の多くは、日本の技術力があれば作ることができるかもしれない。しかし、ビジネスとして成立するかどうかも分からないモノに対して懸命に取り組む人がいて、そこに投資する人がいる。そんな人たちがたくさんいることが、日本との違いだ。シリコンバレーでは「多くの失敗の上にしか成功は生まれない」と、誰もが口にした。失敗も含めて将来に対して投資するのだ。
ソフトとハードの融合した新しいモノづくりも進んでいる。「自動車の世界でも、コモディティ化が進み、シャオミー(小米=格安スマホで急成長する中国企業)のような企業が出てこないとはいえないでしょう」(宮田さん)と、ハードだけで勝負することが難しいのは家電製品だけではなくなるかもしれない。そこでは、UI、UXなどソフトとハードの融合がより求められるようになる。
実際、MITで機械工学を修めた学生がフェイスブックなどIT企業でソフトウェアを学んで起業するなど、ハードとソフトの両方のスキルを持つ人材が増えているという。日本のメーカーにとっては、そうした人材が起業した会社を買収したりするというのも一つの手段になる。ただ、そこで自社のカルチャーに染めようなどとしてしまえば、ベンチャーが持つ新しいアイデアや能力を活かすことはできない。
シリコンバレーの強さは、カルチャーにあるといえる。未来学者でスタンフォード大学教授のポール・サフォーさんが「過去にすがりつけば、悲しい結末を辿ることになる」と話すように、シリコンバレーでは、失敗を恐れず、過去を否定するからこそ、新たなイノベーションが生まれるのである。
(写真・小平尚典)
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