テレビのニュースには拾われないかもしれないけれど、ネットの一部で盛り上がったあの話題。知りたい人へお届けします。
平和な土曜日が、一通のメールで奪われた
1月10日。よく晴れた三連休の初日にもかかわらず、世田谷の街中や公園ははしゃぎ回る子どもたちの姿が少なく、静かだった。テレビや新聞で伝えられた「子ども殺害予告メール」を警戒し、多くの親子連れが外出を控えたためだ。また第2土曜日のため区内の多くの小中学校で授業が行われたが、集団下校への付き添いを余儀なくされた保護者もいた。筆者自身も世田谷区に住み、子育てをする身だが、その日は子どもとともに落ち着かない気持ちのまま自宅で過ごした。殺害予告から6日が過ぎた15日現在、幸いにも世田谷区では関連する事件は報告されていない。警察の捜査情報と犯人逮捕が待たれる中、単なるイタズラだと片付ける段階にはなく、引き続き子どもたちの安全にはいつも以上に注意を払う必要がある。
ネット上でも多くの情報が拡散されたこの事件だが、実は殺害予告が出された当日に不正確な情報が多く出回り、ある種の混乱状態になっていたことをご存じだろうか。それは、行政の対応がネットによる情報伝達のスピード感に対してあまりにも無頓着だったことが原因だった。非常時にこそ活用したいネットの情報伝達力。それを生かすために何が求められるのか、整理してみたいと思う。
事の発端は、前日の9日11時52分に世田谷区役所へ届いたメールだった。
件名:世田谷区のガキを皆殺しにします。
本文:明日午後2時できるだけ多くのガキを殺す。
区の公式サイトに設けられている「お問い合わせセンター せたがやコール」の問い合わせフォームから送信された。「世田谷区」という限定されつつも広範な地域で、明日(10日)14時と時刻を予告し「できるだけ多くのガキを殺す」という悪質な内容だ。この殺害予告情報は当日の17時頃から拡散され、「世田谷に子どもの殺害予告があったらしい……子どもたち、気をつけて!」「この情報を知らない保護者の方へ念のため教えてあげてください」などとツイートされていた。善意の情報共有が広がった形だが、この段階では実は多くの人が「らしい」「念のため」「デマかもしれないけど」といった書き方をしている。世田谷区の公式サイト上に何一つ情報がなかったためだ。