欧州での中国企業による投資は急増している。図-3が12年までの10年間の中国による欧州での投資額の推移を示している。10年間で約60倍になっているが、13年以降の欧州での投資も増加傾向は変わっていない。投資対象となっている分野をみると、日本とは大きく異なる傾向がある。
日本の欧州への直接投資の12年と13年の対象分野は図‐4の①の通りだ。一方、図‐4の②に同時期の中国企業の欧州での投資分野も示している。中国企業の投資は報道された主要なものだけなので、中小企業の買収などはカバーされていないが、傾向は十分に分かる。日中で投資対象として関心を持つ分野が明確に異なっている。
中国の投資対象3大分野は、エネルギー、不動産、運輸だ。これだけで、半分以上を占めている。一方、日本は製造業と保険金融で半分以上を占める。図の対象となった投資額は、日本が5兆6300億円、中国が200億ドル(約2兆4000億円)だが、絶対額でも日中企業が関心を持つ分野には大きな差がある。
欧州の製造業への日本の投資額は2年間で2兆円近いが、中国は1000億円だ。金融保険分野への日本の投資額は9000億円だが、中国は統計に登場しない。一方、中国の不動産への投資額は4600億円、日本は260億円。運輸業への中国の投資は4000億円、日本は850億円。通信への投資も、絶対額で中国が2600億円と、日本の1850億円を上回っている。
中国企業はインフラがお好き
図-3の通り、欧州での中国企業による投資は最近になり急増しているが、特に10年には60億ドル(7200億円)と一挙に前年の2倍になっている。10年1月に欧州委員会がギリシャの財政問題を指摘したことから同国の財政状態の悪化が広く知られることとなり、国債の格付け引き下げにつながった。その後ギリシャの財政危機はポルトガル、イタリア、アイルランド、スペインに飛び火し、PI(I)GS問題と呼ばれることになった。