World Energy Watch

2015年1月20日

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 財政の立て直しを迫られたこれらの国は、国有財産の売却を進めることになる。売却対象の資産には、発送電などのインフラ設備が含まれていたが、買い手の多くは中国企業だった。先ず、11年末に、中国の政府系電力会社・中国長江三峡集団(CTG)が、ポルトガル政府から同国最大の電力会社エネルギアス・デ・ポルトガル(EDP)の21.35%の株式を、27億ユーロ(3800億円)で買収した。CTGはその後、EDP系列の風力発電会社の49%の株式も買収した。

 さらに12年2月には、売り上げでは世界最大の電力会社国家電網がポルトガルの送配電・パイプライン会社RENの政府保有分株式40%のうち25%を3億9000万ユーロ(540億円)で買収し、最大株主になった。残りの15%はオマーンの政府系石油会社が購入した。また、同時に中国の国家開発銀行(CDB)の10億ユーロ(1400億円)の融資も提供されることが合意された。RENの株式の5%はEDPが保有しているので、間接分を含めると中国企業の持ち分はさらに大きくなる。

 14年3月には、中国の中央銀行、中国人民銀行がイタリアの政府系エネルギー企業ENIと旧政府系の電力会社ENELの株式を、それぞれ約2.1%取得したと発表された。取得に要した金額は20億ユーロ(2800億円)と報道されている。14年11月には、傘下にイタリアの送電網とパイプライン会社を保有するCDP Retiの35%の権益を21億ユーロ(3000億円)で、国家電網がイタリア政府系企業から買収した。

中国企業の投資戦略と日本の考えるべきこと

 財政再建の途上にあり、失業率も高いPIIGS諸国では不動産価格は下落している。さらに、PIIGS諸国を中心に、EU外の居住者が不動産を購入した場合には、居住ビザの条件を緩和する動きが続き、ポルトガルなどは中国からの投資呼び込みに成功していると報道されている。

 不動産に加え、電力、物流などのインフラへの投資が目立つのが中国からの投資の特徴だが、好不況の影響を比較的受けず安定した収益が期待できるとの戦略に基づいて投資とも言われている。

 財政再建を迫られるPIIGS諸国が、評価額が高いインフラ設備の売却を外国資本に行うのは仕方がないが、海外の国営企業がインフラ設備を保有すると将来問題が生じる可能性もある。中国は、いま東欧を中心に石炭火力設備、高速鉄道などを売り込んでいる。欧州は中国にとっては重要な市場だ。中国の国営企業が経営主体の電力会社が将来設備の更新を行う際には、当然中国企業にも声がかかるだろう。国営企業であれば中国政府の意向にも配慮する必要があるかもしれない。

 日本でも電力送配電網、ガスパイプラインの自由化の動きがあるが、将来外国資本がインフラ設備を購入する事態が起こっても問題はないのか。欧州の先行事例も良くみながら検討を進める必要があるだろう。

  
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