まず、シェールオイルは一般的にコストが50~80ドル/バレルといわれており、油価が50ドルにまで下落すれば、シェールオイルの生産は停止するといわれる。シェールオイルは過去4年間に300万b/d以上増加しており、急激な増加がOPECにプレッシャーをもたらしていた。
従って、年々増え続けるシェールオイルを敵視する考えが生まれてもおかしくはない状況にあった。また、原油輸出量を伸ばしている、世界最大の原油輸出国ロシアを苦々しく思ったかもしれない。実際、プーチン大統領は「原油価格は常に政治的な要素が関連している」と米国の関与を匂わすような発言をしている。ただし、OPECのエル・バドリ事務局長は12月10日、「原油生産枠を維持したのは、米国やロシアに圧力をかける意図はなかった」と述べている。
OPECは価格安定化を目指して、これまでは世界の石油需給を彼らの生産の増減を通じて調節するスウィングプロデューサーとしての役割を果たしてきた。ところが、昨年11月27日開催の総会では、大幅な原油供給余剰のなかで減産を見送り、いわば調整役を放棄したかたちとなった。多くのメディアがOPECの役割の終焉といった指摘を行った。
国別の生産枠の割当は現在決められておらず、仮に新たな生産枠を決定しても守られない可能性もあった。OPECが市場調節機能を放棄した結果、市場の変動性も高まってきており、今後は価格変動性が高い状態が続くとの見方もできる。
OPEC総会後、市場では現状の余剰生産が続くとみて、原油は大きく売られ、高コストのシェールオイル、ロシアやイランを狙い撃ちしたかたちとなった。一部報道では、サウジが米国と組んでロシアに打撃を与える選択を行ったという陰謀説も出てきた。
確かに、最も大きい影響を受けたのはロシアで、ルーブルは対ドル相場が2014年9月以降3カ月で36%も下落した。経済制裁と原油安のダブルパンチで、ロシアは財政を含む内政面で大きな課題を突き付けられている。イランについては、財政均衡油価が120ドル/バレルを超えているといわれ、油価下落により財政収支の大幅な赤字に陥る可能性がある。