Wedge REPORT

2015年1月22日

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永田安彦 (ながた・やすひこ)

日本エネルギー経済研究所 中東研究センター副センター長

1988年ニューヨーク大学経営大学院修士課程終了。石油会社勤務等を経て現職。著書に『米国投資銀行の事業概要と石油先物市場での戦略』(共著、日本エネルギー経済研究所)等。

 世界経済において好調をキープする米国においては、近年のシェール革命により、原油生産量を急激に増やし、自給率を高め、エネルギー・インデペンデンスを実現する途上にあった。原油安は消費国としての米国にとってはメリットがある一方、シェールオイル生産業者にとっては当初は投資の縮小、後には操業の停止などのリスクをもたらす。

 さらに、ここにきて原油安は金融市場に大きな影響を及ぼしている。ロシア等の資源国の通貨が急落し、エネルギー関連の株や社債の価格が下落し、中東湾岸諸国の株価も大きく値を下げた。金融市場における摩擦が世界経済に及ぼす影響も注視する必要がある。

OPECでなく実需が決める原油価格

 原油価格は現状では5年ぶりの低水準にある。OPECが現状の生産水準を維持していくならば、15年の上半期において、100万b/dを超える供給余剰に陥る。価格が下落するなかで、シェールオイル生産業者などの高コストの供給者は生産を停止するところも出てくるであろう。そうしたなかで、早ければ15年下半期にも石油需給が均衡化に向かう可能性もある。ただし、原油価格が反転するには、原油安で新興国を始めとする石油需要が上向くという強いシグナルを必要とする。

 OPECが油価の調整を市場原理に委ねる判断をしたことで、今後原油価格は変動性を高めていく可能性が高い。原油供給途絶につながる地政学リスクの高まりといった状況にすぐに原油市場が反応する可能性がある。原油価格は機能不全に陥ったOPECでなく、実需が決める1年になることが予想される。

 次回の定例総会は15年6月5日に予定されているが、OPECの盟主であるサウジが20ドルに下落してもOPECは減産しないと明言しており、油価が低水準で推移しても、6月以前に緊急総会が開催される可能性は低いだろう。

減産しないことを発表したサウジのヌアイミ石油相 (AP/AFLO)

 ただし、このOPECのシェア維持の方針にはリスクが伴う。OPECと非OPECの戦いは85年から99年まで続いたとされ、開始時と最後には原油価格は10ドル台にまで低下した。今回のOPECと非OPECの新たな戦いがどのような結末を迎えるのか、原油価格の安定は世界経済とも密接に結びついており、特にサウジアラビアを始めとする今後の市場動向に注目が集まる。

  
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◆Wedge2015年2月号より

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