国際石油市場に異変が起きている。本年6月上旬まで高値水準を維持していた油価が、以降下落を始め、9月下旬からさらに下げ幅を広げている。油価が低下に転じたのは、米国のシェール革命により供給が増えるなか、需要は中国や欧州景気の鈍化から伸び悩んだからだ。
米ロサンゼルスの石油精製所(Aflo/Reuters)
この間、ウクライナ危機やイスラム国の台頭など地政学リスクは発生している。従来であれば、「地政学リスクの発生→油価の上昇」となった。しかし、実際には油価は低下した。ウクライナでもイラクでも石油・ガス供給に支障が生じる事態には至らなかったからだ。今の時点では原油価格と地政学リスクには相関関係が見られない。
しかも需要減に合わせ供給量を減らさねばならない石油輸出国機構(OPEC)の産油量が、油価低下分を増産で補うためか、一日当たり3060万(9月)と2011年12月に課した上限3000万を超えている。これでは油価が低下を続けるのも当然である。
だが油価が6月以降25%も減少し、1バレル当たり80ドル台となった段階で値を上げる国が出始めた。OPEC加盟国ながら増産余力の乏しいイラン、ベネズエラ、アルジェリアなどである。
興味深いのは内輪の産油国の苦悩を耳にしながら、サウジアラビアが10月1日からアジア市場向けの販売価格の値下げを発表したことだ。アジア市場で競合するイラク、クウェート、イランも負けてはならないと値下げに踏み切っている。これが9月末以降、油価がさらに下落した理由である。