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2015年1月22日

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永田安彦 (ながた・やすひこ)

日本エネルギー経済研究所 中東研究センター副センター長

1988年ニューヨーク大学経営大学院修士課程終了。石油会社勤務等を経て現職。著書に『米国投資銀行の事業概要と石油先物市場での戦略』(共著、日本エネルギー経済研究所)等。

財政均衡油価はサウジ89ドル
ベネズエラ162ドル

 原油価格が低水準で推移した場合、OPECを始めとする産油国の財政への影響が懸念される。サウジアラビアは対外資産が約7500億ドルに及ぶとされ、国家債務も非常に低水準にあり、財政収支の赤字が当分の間、続いたとしても、十分に耐え得る。財政均衡油価は89ドルといわれ、イランなど他の産油国よりは低い。ちなみに生産コストは4~5ドルである。

サウジの財政均衡油価は89ドルと言われる
(NATIONAL GEOGRAPHIC/GETTY IMAGES)

 ただし、それが長期に及んだ場合は、財政の逼迫は避けられないであろう。他の産油国、特にナイジェリアやベネズエラは財政均衡油価がそれぞれ126ドル、162ドルで既に相当厳しい状況にある。産油国の多くは、石油製品、ガス、電力、水道などに多額の補助金を支払っているが、こうした補助金にも手を付けざるを得なくなるであろう。

 アラブの春以降、産油国は自国民の公務員等への給与を大幅に引き上げるなどバラマキを続けてきたが、こうした支出を含め、政府歳出全般の見直しを必要とするであろう。クウェートでは14年6月、政府が軽油補助金の廃止を宣言した。また、アブダビ首長国では同年11月、電力と水道の料金を15年より引き上げることを発表した。

 原油価格の下落は世界経済の景気を下支えする効果が期待できる。デフレ基調の先進国経済にとっては原油安がデフレを増長するとの懸念もあるが、消費国にとっては物流、燃料のコストを下げ、資源輸入国は貿易収支の改善につながる。

 一方マイナス面としては、今後の資源開発への投資が停滞することなど、将来の供給への懸念があげられる。米石油大手が15年の開発投資額を引き下げると発表するなど、原油安は将来資源の供給を縮小し、需給バランスの不均衡化をもたらす。石油需要は、新興国を中心に世界の人口増、経済発展により、将来増えると予想されており、供給が滞れば、再び資源価格は上昇することになる。

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