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2015年1月23日

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岡田仁志 (おかだ・ひとし)

国立情報学研究所情報社会相関研究系准教授

1965年大阪府生まれ。東京大学法学部卒業。大阪大学大学院国際公共政策研究科博士前期課程修了。同研究科博士後期課程中退。博士(国際公共政策)。2000年から国立情報学研究所助教授。2007年より現職。著書に『決定版ビットコイン&ブロックチェーン』(東洋経済新報社)、『リブラ 可能性、脅威、信認』(日本経済新聞出版社)など。

 コンピュータが競い合ってビットコインを得る作業は、鉱山で金塊を掘り当てる様子に似ていることから採掘と呼ばれる。掘り当てた金塊を現金と交換するように、採掘したビットコインは取引所を介して市中に流通する。特筆すべきは通貨発行の仕組みである。ビットコインは一極的に発行されるのではなく、無数に存在する採掘マシンの中で、プログラムに従って自動的に発生する。

 国家によらない通貨発行を認めることは、国家が独占してきたシニョレッジ(貨幣発行益)を譲り渡すことを意味する。国家が独占してきた通貨発行権を手放すとは考えられない。だがビットコインには発行者が存在しないため、規制をしようにも名義人が見当たらない。インターネットを統治する国家が存在しないように、ビットコインを支配する国家も存在しない。中心を持たないビットコインは「インターネットの、インターネットによる、インターネットのための通貨」である。

 アメリカ合衆国のビットコインに対する姿勢は明確であった。米国法において通貨とは「合衆国または他国の硬貨・紙幣」であって、「法的な強制通用力を有する法貨(リーガルテンダー)」として「流通性」があり、「発行国において慣習的に決済の手段として使用されているもの」と定義される。米国財務省の金融犯罪取締ネットワーク(FinCEN:フィンセン)は、これに則して仮想通貨の法的性質を論じ、13年の報告書で仮想通貨は「法的な強制通用力を有しない通貨」であると定義した。

 フィンセンの定義に従えば、相手が任意で受け取ればビットコインは通貨として機能する。ビットコインの送金を取扱う業者には、マネー・サービス・ビジネス(MSB)の規制が準用され、利用者の本人確認、送金記録の保存、疑わしき取引の報告の義務が課される。目的はマネー・ロンダリングの防止であるが、課徴金を警戒する金融機関はビットコイン関連の融資や口座開設に慎重で、口座を凍結した話も出ている。国外のビットコイン取引所を経由してサービスを提供するなど、米国のビットコイン決済業者は口座を開設できない不利益を被っている。

 通貨発行権を有する政府、ビットコインより高い手数料ビジネスで稼ぐ銀行、カード会社はビットコインの広がりとともに、警戒感を強めている。

銀行やカード会社などは為替や決済手数料の安いビットコインを警戒 (REUTERS/AFLO)
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