中国では、政府の規制が海外企業には壁となり、プリペイドカード課金が主体で課金決済方法が複雑であるなどの理由から、日本企業の単独進出は難しい。中国企業と事業提携して、進出することが一般的だ。そして、多くの日本のゲーム会社にとって、提携先として、まず候補にあがるのがテンセントだ。しかし、今やテンセントにとって、日本で成功したゲームを、そのまま展開することは意味を失いつつある。
テンセントは、ソフトウェアのみで自社のゲームを展開する企業としては世界最大といえるまでに成長している。同社のメッセンジャーサービスの「微信(ウィーチャット)」は、2014年9月時点で、月間利用者数が4億6800万人に達した。中国の携帯電話人口は7億人であるため、カバー率は非常に高い。同じようなサービスである「LINE」の月間利用者数が1億7000万人であることと比べると、ユーザーの多さがわかる。
ソーシャルネットワークやeコマースが中心のように思えるが、売り上げの主力はゲームだ。14年7~9月期の売り上げ198億元(3717億円)のうち、58%をゲームが占めている(円グラフ参照)。多くはパソコン向けゲームで、中国市場で60%のシェアを握る独占状態を築き上げている。2月1日時点の時価総額は、1兆2800万香港ドル(19兆4000億円)と、米フェイスブックの2093億ドル(21兆8400億円)に匹敵する。
同社は、急成長が始まったスマホゲーム市場でも、独占的な地位を確立することに力を入れている。中国には、グーグルが進出していないこともあり、アプリ市場「グーグルプレイ」が存在しない。そのため、様々なゲーム会社が独自アプリ市場を展開して、群雄割拠の状態が続いていた。
しかし、一昨年8月に、テンセントが「微信」のアカウントに連動するアプリ市場を立ち上げたことで状況が変わり始めた。自社開発のゲームを次々に投入して、急激にユーザーの囲い込みを進めるようになった。
テンセントは、3000人規模の自社のゲーム開発チームを持っている。世界のゲーム会社を見ても、トップクラスの規模だ。例えば、ガンホー・オンライン・エンターテイメントは従業員全体で約1000名。日本国内で最大規模のスクウェア・エニックスが従業員全体で3706名。社内に単体で3000人もの開発チームを持つ企業は、欧米の数社しかない。テンセントのチームはパソコンのオンラインゲームを中心に開発を行っていたのだが、スマホ向けゲームの開発体制を整えてきている。