2024年11月23日(土)

Wedge REPORT

2015年3月2日

 アップストア向けにも、ゲームを展開しているが、2月6日時点で、中国のトップセールス上位10タイトルのうち5タイトルを占める独占状態を作っている。ロールプレイングゲーム「三国之刃」、アクションゲーム「我叫MT2」など様々なジャンルのゲームを登場させている。14年7~9月期の売り上げは26億元(488億円)に達しており、同社の新しい中核事業へと成長しつつある。

 昨年12月に、テンセントは、ガンホー・オンライン・エンターテイメントの「パズル&ドラゴンズ」の中国展開での事業提携を発表した。テンセントが、中国向けにゲームを新たに作り直すという。

 日本側はテンセントとの提携を求めるが、社員の話をもとに総合的に勘案すると、テンセントは日本で成功したゲームが欲しいというわけではないのが本音のようだ。ヒットしたゲームやアニメのブランド名を使用する権利を獲得して、ゲームそのものは自社で開発するという状態が最も望ましいようだ。

 それは好まれるゲームの国民性の相違が大きく日本のゲームがそのままでは通用しないという理由がある。日本ではスマホゲームの多くが、キャラクターやアイテムを「集める」点に力点を置く傾向が強い。中国では、他のプレイヤーとの「対戦」が好まれる。ユーザーが課金するポイントは、自分の能力を強くすることができるといったアイテムに集中する。

 テンセントにしてみれば、日本の企業と共同で開発するよりも、自社の開発チームで中国市場に合わせて最初から作り直した方が早い。「日本企業はスピードが遅い」と話す社員もいる。人件費の面でも日本より優位性がある。また、スマホゲームの開発に求められる技術は、極端に難しいものではないため、日本の開発会社だからこそ持つ優位性はほとんどない。

 バンダイナムコゲームスは、昨年12月から、テンセントと提携してパソコンのブラウザ向けに「ナルト」の展開を始めている。開発はテンセントが行い、日本側は作品内容が原作に忠実に表現されているかどうかをチェックする監修という立場で関わっている。

 これは、「ナルトというブランドを守るための提携」(バンダイ関係者)という側面があるという。中国は、アイデアコピーや著作権違反が当たり前のように行われる国だ。人気のあるアニメのキャラクターやゲームのアイデアをコピーするゲームは後を絶たない。「ナルト」や「ワンピース」といったコンテンツが無許可で展開されているケースは少なくない。

 テンセントに、公式に提供することで、「ナルト」の未許諾ゲームを抑止しようという意図があるようだ。テンセントのアプリ市場には、数多くのナルトの未許可ゲームも掲載されているが、正式ライセンスによってそれらの登録をやめることに協力的になってきているという。ユーザーも正式ライセンスされたゲームを求め始めるように変わっているようだ。ただ、「ビジネス的な収益は次の段階」(前述の関係者)という。

 「パズドラ」も、現実的にはブランドを守るためという面が高いのではないかと思われる。すでに、中国には、パズドラのゲームアイデアをコピーしたゲームが10以上も存在している。ゲームとしては、中国人ユーザーにとっては陳腐化している可能性が高く、日本のような成功を期待するのは容易ではない。


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