中国の意図と行動に対する懸念から、南シナ海では安全保障関係の網の目が広がろうとしている。このプロセスは加速しつつある。最近の両国のパートナーシップに関する決定、フィリピンによる紛争の仲裁裁判への提訴、米越間での安全保障関係の緊密化の追求を見ると、両国は、中国との対立に関しては、慎重さは脇に置くことにしたように思われる、と述べています。
出典:Michael Mazza,‘Made in China: A Vietnam-Philippines Axis’(National Interest, February 3, 2015)
http://nationalinterest.org/feature/made-china-vietnam-philippines-axis-12174
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この論説は、去る1月末にマニラで行われた、ベトナムとフィリピンの外相会談により、両国が戦略的パートナーシップの樹立に向けて議論を始めたことを受けて書かれたものです。
両国が海軍の合同演習および合同パトロールから始め、それを更には監視・偵察情報の共有に進化させていくのであれば、進歩であり結構なことです。ただ、それにより中国の行動が直ちに掣肘を受けるというところまでは行かないように思います。両国間の戦略的パートナーシップの有効性や、今後どう発展していくかを判断するのは、時期尚早かもしれません。他方、中国が、威圧的な行動により自らにとって望ましくない状況を招きつつある、とのマッザの観察は、その通りでしょう。
いずれにせよ、中国の近隣諸国が海洋の安全保障に関心を持ち、連帯を強めることは、歓迎すべきことです。日本は、巡視船の供与を含め、これら諸国の海洋の安全保障への関心に応える政策を進めています。論説が取り上げている、ベトナム、フィリピンの他、インドネシア、マレーシアにも、更に海洋に関心を持つよう促すことが有用でしょう。昨年11月、東アジア・サミットで、インドネシアのジョコ・ウィドド大統領は、「海洋ドクトリン」を打ち出し、海洋に対する多大の関心を表明しています。マッザが言う、南シナ海における安全保障関係の網の目というのは、これら諸国の海洋の安全保障に対する関心の高まりによる相互の、あるいは日本、米国などとの様々な形の協力の集積というゆるやかな性格のものを念頭に置いていると思われます。そして、それは、中国に対する一定の圧力になる可能性があります。
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