2024年12月22日(日)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2015年4月21日

 米国の著名な中国学者であるシャンボー米ジョージワシントン大学教授は、3月6日付けの米ウォールストリート・ジャーナル紙に、「来たるべき中国の崩壊」と題する論説を掲載しました。これは、中国専門家の間に大きな波紋を投じました。それは、シャンボーが、今まで中国崩壊論に慎重な立場をとり続けていたからでもあります。論説の要旨は、次の通りです。

 すなわち、中国の政治体制は見かけ以上に壊れており、習近平は反対派と腐敗を厳しく取り締まることで党の支配を強化しようとしている。だが彼の独裁政治は中国の体制と社会に強いストレスを与えており、限界点は近づいている。共産党の支配の最終段階はすでに始まっており、思った以上に進んでいる。共産党支配が静かに終わる可能性は小さく、逆に長びき、混沌とした、暴力を伴うものになりそうだ。習近平がクーデターによって失脚する可能性すらある。

 体制の脆弱性を示す5つの兆候がある。

 (1)中国の経済エリートたちはすでに片足をドアの外に出しており、体制が揺らぎ始めれば、大挙して逃げ出す用意ができている。

 (2)習近平は、政治的な抑圧を大幅に強化している。これは党の指導者たちの不安と自信のなさの表れである。

 (3)政権に忠誠を誓っているように見える者たちも、実際にはそう装っているだけである。

 (4)党政機関及び軍にはびこる腐敗は、社会全体に蔓延している。根本的原因は一党支配体制にあるのであり、反腐敗キャンペーンでは問題を解決することはできない。

 (5)中国経済は、制度的な落とし穴にはまっており、簡単には、そこから脱出できない。党が打ちだした大胆な経済改革パッケージも既得権益層が実施を阻んでいる。

 これら5つの亀裂は、政治改革によってのみ解決できる。現在の政治システムこそが、社会・経済改革にとっての最大の障害となっている。習近平の「中国の夢」は、実はソ連共産党の悪夢を回避する「夢」でもある。ゴルバチョフと逆の方向で、それを目指そうとしているが、それが唯一の選択肢ではない。江沢民と胡錦濤は、変化を拒否するのではなく変化を管理しようとして、限定的ながらも政治改革を目指した。だが、習近平政権は、政治をゼロサム・ゲームだと考えており、管理を緩めることが統治システムの終わりの始まりと考えている。


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