オトナの教養 週末の一冊

2015年4月23日

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中村宏之 (なかむら・ひろゆき)

ジャーナリスト

1967年生まれ。91年、慶應義塾大学経済学部卒、読売新聞東京本社入社。ロンドン特派員、米ハーバード大学国際問題研究所研究員、経済部デスク、調査研究本部主任研究員などを経て2017年4月より読売新聞東京本社メディア局編集部次長。『御社の寿命』、『世界を切り拓くビジネス・ローヤー』、(いずれも中央公論新社)など

権力がメディアを都合よく使いかねない

 もうひとつ、本書にあらためて気付かされるのは、メディアが権力を監視する役割を担うのは当然だが、十分注意していないと、権力側はメディアを都合よく使いかねないという重要な事実である。トニー・ブレア元首相のプレス・セクレタリー(報道担当)を務めたアラスター・キャンベル氏は、政府のメディア対策の責任者として知られたが、ブレア政権にとって巧みなメディア戦略は、メディアにとっては大いに警戒すべきものだった。キャンベル氏は「スピンドクター」という異名をとり、その手法には少なからず批判があった。

 〈「スピン」(糸を紡ぐ)とは「都合良く受け止められるようなやり方でニュースや情報を流す」という比喩的用語で、「ドクター」とはその「権威者」「忠告者」〉

 著者はこう説明するが、実際にブレア政権時代にはそうしたことが目立っていたようで、日本でも有名な英国人ジャーナリストに筆者が聞いたところ、肩をすくめるような表情で「スピンドクターだ。確かに」と話した表情が忘れられない。むろん、これまで日本やアメリカでそうしたことが全くなかったとは言い切れないだろう。

 報道の世界に身を置く一人として、また英メディアの実態を多少なりとも垣間見た者として、本書に盛り込まれた事実からは、いろいろと考えさせられる。メディアを巡る様々な意見があることを理解しつつ、一度立ち止まって「自分はどう思うのか」を問い直してみる機会を与えてくれる本である。

  
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