例えば、青果店の店頭で売っているイチゴも2パックで2500円という値段が付いている。百貨店並みかそれ以上の価格帯だが、品質は最高級で甘さも絶品。乾燥したホタテ貝柱も市場内の各店で飛ぶように売れているが、5000円という値段が付いている。大粒の一級品だ。
アベノミクスではデフレ脱却を掲げているが、黒門市場ではひと足早くデフレからすっかり脱却しているのだ。
食べ歩きをコンセプトにしたことで、もう1つ大きな変化があった、という。日本人の若いカップルなどが黒門市場にやって来るようになったというのだ。何か面白そうなことが起きているということで、これまではほとんど縁のなかった若者たちの関心を引いたのだ。外国人だけでなく、客層を広げることにつながったのである。
外国人で大繁盛している黒門市場だが、大きな不安材料も抱えている。
「外国人がおらんようになったら、どうするんや」
文政年間(1822年頃)に起源を持つ黒門市場。明治期の大火、昭和期の空襲を乗り越えて現在に至る。織田作之助の『夫婦善哉』にも黒門市場は登場する。
円安がいつまでも続くかどうかは分からない。外国人の間で日本ブームが終わってしまう可能性もある。外国人旅行者の数が頭打ちになることは十分に想定できる。そうなったら黒門市場はどうやって生きていくのか。
ひとつの方策は、大阪ミナミの各地域との連携を深めていくことで、点ではなく面として外国人客を引き付けること。ミナミには家電専門店街の「でんでんタウン」や飲食店街の道頓堀など、外国人の人気スポットが点在する。これを観光ルートのように相互に結びつければ、さらに面白さが際立つのではないか、振興組合の会合では、そんな議論が繰り広げられているという。
今、地域創生に向けて全国各地で外国人需要をどう取り込んでいくかが大きな課題になっている。黒門市場の今後の取り組みにはさらに注目が集まることになるだろう。
(写真・生津勝隆)
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