2022年11月30日(水)

安保激変

2015年5月1日

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小谷哲男 (こたに・てつお)

明海大学外国語学部教授

日本国際問題研究所主任研究員を兼任。専門は日本の外交・安全保障、日米同盟、インド太平洋の国際関係。主な共著に『アジアの国際関係―移行期の地域秩序』(春風社)など。
 

 一部にはこのため沖縄の基地をグアムにまで下げるべきという意見もあるが、今回のガイドラインは既存の施設の抗たん性を向上させるため、施設・区域の日米共同使用を強化し、緊急事態に備えるため民間の空港及び港湾などの利用を進めようとしている。つまり、緒戦で既存の軍事施設が破壊されても、自衛隊と米軍は民間施設を含む代替施設を臨時に使用して反撃能力を維持し、一方で破壊された施設の復旧を行うのである。これによって抑止力を維持することが狙いである。

 もちろん、このためには、地方自治体の協力が必要で、新石垣空港や下地島空港などの緊急時の軍事使用が担保されなければならない。普天間飛行場の移設をめぐって沖縄で反基地感情が強まる中、地元の理解を得ていくことが今後の課題である。

政策と現実のギャップを埋めていく努力を

 今度のガイドラインは、中国が強硬姿勢を崩さず、岩礁の埋め立て工事を進める南シナ海における日米協力にも道を開く。中国は長距離核ミサイルを搭載した戦略原子力潜水艦の運用をまもなく南シナ海で開始する見込みである。中国がこの原潜の運用に成功すれば、中国はより残存性の高い第二撃能力を保有することになる。これによってアメリカの核の傘の信頼性が即座に揺らぐことはないが、抑止力を維持するためにはこの中国の原潜の探知が不可欠である。

 アメリカは南シナ海で潜水艦の探知を常続的に行っているが、軍事予算の削減により相当負担となっている。世界でも最高の潜水艦探知能力を持つ海上自衛隊がこの任務で協力すれば、日米同盟の抑止力を十分に維持することが可能である。

 また、中国が周辺諸国と南シナ海の領有権をめぐって軍事衝突すれば、海上優勢を維持するために機雷を敷設することが考えられる。重要な海上交通路である南シナ海に機雷が敷設されれば、日本の存立を根底から脅かす事態として認定され、集団的自衛権の限定的な行使として、海上自衛隊が米海軍などと機雷掃海に従事することも考えられる。

 以上のように、今回のガイドラインの改定によって、日米は有効に中国の挑戦に対処することができるようになる。今回のガイドラインの目的の1つが「切れ目のない対応」であるが、実際には切れ目のない対応は不可能である。様々なシナリオに基づき、同盟調整メカニズムと部隊の訓練を繰り返すことによって、政策と現実のギャップを絶え間なく埋めていく努力が必要である。

  
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