2024年11月21日(木)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2015年5月8日

 米ハーバード大学教授で元米財務長官のラリー・サマーズが、4月5日付の米ワシントンポスト紙及び英フィナンシャル・タイムズ紙に寄稿し、世界経済の構造は大幅に調整されなければならず、米国がリーダーシップを取るためには、超党派の基礎が必要である、と言っています。

 すなわち、米国が、英国など従来の同盟国のAIIB(アジアインフラ投資銀行)への参加を止められなかったことは、米国が世界経済システムの主導者としての役割を失ったことを示すものとして記憶されるだろう。

 中国の経済規模が米国に匹敵するようになり、途上国が世界経済の半分を占めるようになった今、世界経済の構造は大幅に調整されなければならない。

 米国内の圧力によって、現在の構造は徐々に機能不全になっている。主に右からの抵抗で、米国はIMFの統治改革を承認しない唯一の国となった。

 同時に、左からの圧力で、既存の開発銀行によるインフラ案件に対する融資が広く制限され、中国がAIIBを設立する道を開いた。

 米国の指導者は以下の3点に留意すべきである。

1)米国のリーダーシップには超党派の基礎がなければならない。2大政党の一つがすべての貿易協定に反対し、もう一つの党が国際機関に対する資金提供に抵抗する限り、米国は世界経済システムを形成できない。

2)国内政治、国際政治を問わず、中産階級が最も重要である。

 今の世界では、知的財産、投資保護や規制の調和など、エリートの関心事項と、貧困や児童などへの道義的関心が主として議論され、中産階級の関心事項はあまりない。工業国の働く者と途上国の増加する都市人口の利益に資さない政策は、長期的にうまくいかない。

3)これからの世界では、資本が十分にあり、デフレの圧力が強く、需要が不足する状態が長く続きそうである。これからは緊縮ではなく、投資の推進を優先させるべきである。現在の制度では債務国が調整の責任を負っている。債権国にも圧力がかかるような、釣り合いのとれた制度が必要である。


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