2024年4月20日(土)

韓国の「読み方」

2015年5月26日

 これは、儒教に基づく韓国社会の伝統的思考法に則ったものだ。韓国では、「正しさ=正義」が絶対視される。別の言い方をするならば、道徳性が非常に重視される。ただ、正義や道徳性の判断基準は自分たちが決めるので、その感覚を共有しない他者から見ると「正義の押しつけ」になってしまう。だから、日本とは「正しい歴史認識」を巡って衝突することになる。

 現代韓国研究の第一人者である慶応大の小此木政夫名誉教授は「近世までの朝鮮は経済的に豊かでなく、軍事的に強大でもなかった。中国の儒教文明の強い影響下にあったこともあり、『何が正しいか』という名分論で自分たちの正統性を主張するしかなかった。中国との関係では、力ではかなわないから、論理的な反論をする以外に方法がない。それが、『正しさ』を追及する伝統を生んだのではないか」と話す。

 1980年代までの強権的体制の下ではこうした意識が顕在化することはなかったが、民主化と冷戦終結によって重しが外れ、「伝統」の影響力が復活してきたと考えられる。こうした現象は、韓国に限らず、東欧などでも見られることだ。

強い序列意識が背景に

 韓国の社会意識に大きな影響を与えている儒教・朱子学は、序列意識の強いものだ。そして、序列上位のものには道徳性を強く求める「徳治」が強調される。この考えは、国際関係にも持ち込まれる。韓国が自らより序列上位にあると考える欧米先進国や国際機関に徳を求めて、韓国の正しさ=日本の不当性を訴えようとなるようだ。

 その裏には、強大国に力で対抗できない「小国」だと自らを規定する意識がある。周辺国の思惑と争いの中で、自らの運命を主体的に決められずにきた朝鮮半島の歴史を背景にしたものだ。

 だから、過去の侵略行為を否定し、慰安婦問題での日本の責任を否定する(と韓国が考える)安倍首相を、米国が歓迎するようなことは、あってはならないことだ。米国を訪れる外国首脳に対する最高のもてなしである、上下両院合同総会での演説の機会を安倍首相に提供し、過去への謝罪をしない安倍首相に拍手を送ることは言語道断ということになる。

 それなのに実際には、慰安婦問題や植民地支配について演説で明言しなかった安倍首相に、米国の議員たちは総立ちの拍手を送った。韓国の感覚からすれば、あってはならないことだ。韓国メディアが演説後、「韓国外交の敗北」などと大きく書き立てるほどのショックを受けた背景には、こうした感覚があるといえそうだ。

 日本と同じように、韓国にも「国連信仰」がある。世界遺産の問題でユネスコが「正しい」姿勢を見せることに期待する韓国の心理は、安倍演説への反応に通じるものだ。米国やユネスコに「正しい主張」を伝えることは、決して「告げ口」などとは評されないのである。


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