日本の失業率と均衡失業率の推移を見たのが図表2である。均衡失業率とは、労働需給が均衡する失業率水準を指し、賃金がギリギリ上がらない失業率水準と言うことができる。そこで、失業率と均衡失業率との差の大小は、雇用改善や労働需給のひっ迫がどの位まで進んでいるかを示していると見ることができる。
この図表2で分かるのは、直近の失業率が均衡失業率とほぼ同水準にあり、リーマンショック前の景気が良かった時点での状況よりも労働需給がひっ迫していると見られることである。かような労働需給では、賃金上昇が加速してしかるべきと言え、これは失業率と賃金がトレードオフになるという経済学的な見方(フィリップス曲線)の示すところでもある。そして、企業業績が大きく改善していることを勘案すると、なおさらである。
ところが、賃金は労働需給のひっ迫度合から想定されるほどには上昇していない。実際、失業率と均衡失業率の差を労働需給のひっ迫度合を示す数字とし、それと賃金の動きを照らし合わせてみると、相関はほとんど窺えない(図表3)。