2024年7月16日(火)

田部康喜のTV読本

2015年7月8日

 若者たちには、切り拓くべき地平は見えてこない。過去を美化するのは間違っているだろう。しかし、彼らの閉塞状況はいま、戦後の歴史のなかで最も過酷ではないのか。

 金融ビジネスのなかで、カネの流れを手中に入れ、起業によって自己実現できる若者は、一握りに過ぎない。

 諦めのなかで、ジリジリとした焦燥感に焼かれるような気持ちでいるのではないのか。現代の青年たちは。

ライトは50人以上もの人間をデスノートによって、殺していく。彼の前に立ちはだかるのは、世界の未解決事件に挑むL(山崎賢人)である。ライトの殺人をあばき、ライトを追いつめていく。

 Lとライトの戦いは、正義と悪の戦いとして描かれてはいない。そこにまた、現代の若者たちの苦悩があるのではないか。

 正義とはなにか。社会は正義によって運営されているのか。若者たちを取り巻く環境は、単純にその答えをだせそうにもない。

 ライトとLの戦いを上から眺めるようにして、謎の美少女ニア(優希美青)が登場する。どちらが勝つのか楽しんでいるようである。

 ニア役の優希は、朝の連続テレビ小説「あまちゃん」(NHK)のご当地タレントのユニット・GMTの一員だった。その後、ドラマと映画の出演が続いている。

 ドラマは、この3人の視点が絡み合って、重層的に若者たちの希望と挫折の物語が綴られていくのだろう。

 父親ながら刑事として、大量殺人事件の犯人としてライトを追っていく、松重豊の渋い演技と、妹役の藤原令子の可憐さも見どころになる。

  
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