一人当たりGDPを購買力平価ではなく、名目ドル建てで見ても大きな方向性は変わらない。現在の中国は日本の78年当時、台湾の89年、韓国の91年と同程度の水準にあるが、やはり日本は安定成長期入りしているし、台湾・韓国もその途上に入りつつある時期に当たっている。
日本の場合、高度成長期と安定成長期の成長力の差は投資と個人消費の減速にある(図表3)。台湾と韓国の場合も基本的には同様だが、日本と違うのは移行期の90年代に通貨が割安に動いていたことである(図表4)。
これは、ちょうど対米貿易摩擦に超円高が加わって日本企業のアジア展開が一段と加速した時期に当たり、アジア諸国がその恩恵を享受した時期に当たる。そのため、移行期といっても韓国・台湾では高度成長的な成長が長く続き、アジア通貨危機まで投資と個人消費とも高い伸びを維持していた。
日本、台湾、韓国の高度成長から安定成長への移行を確認した上で中国経済を見ると、現在は輸出・投資主導から内需・消費主導の経済成長への移行期にあるとともに、10%台の高度成長期から5%程度の安定成長期に向かう移行期にもある。