マノスは年恰好が50台半ばで苦み走ったちょっといい感じの中年男である。マノスにはガールフレンド(つまり恋人)がおり、彼女はアラフォーのウイーン在住のドイツ人である。毎年ユースホステルが営業している夏季6か月間だけサントリーニに来てマノスの経営を手伝っている。二人が黄昏時にテラスでお茶をしている姿をしばしば見かけたが、なかなかどうして往年のフランス映画のようで絵になっていた。
話を戻す。タカ&マイのコンビは早速マノスを訪ね委細を相談。マノスはすぐさま従業員を全員招集。昨夜から韓国女子を見た者がいないか尋ねた。一人の使い走りのボーイが昨夜の11時過ぎに韓国女子がピザ屋のマケドニア人のバイトの店員と近くのベンチで親密に話しているのを目撃したと証言。マノスは携帯でピザ屋のオーナーに電話してマケドニア青年の氏素性・身元を確認。毎年夏季にバイトに来ており悪いことをする奴ではないとの証言。
「これは単なるA boy meets a girl storyである。彼女は彼の部屋で幸せな時間を過ごしてじきに戻ってくる。このロマンチックなこの島ではこうしたことは毎年数えきれないほど起こる。じゃあ、全員解散」マノスは確たる口調で言った。
さすがにキャプテンである。事実30分以内に韓国女子は戻ってきて、何も言わずに帰りのバスに乗った。こうしてタカ&マイの捜査コンビは即日解消となった。
サントリーニ島のロバ
島の港から狭い急坂を観光客や荷物を載せて登ってゆくロバは島の名物でありTV番組などで紹介されているとおり。観光客がいない早朝は定期便の地元のフェリーボートから荷揚げされた食糧・物資を満載したロバたちが忙しく急坂を往復している。一袋50キロのセメント袋を四つも五つも背負って十数匹のロバが黙々と登ってくる。日中は肥満体の欧米人中高年観光客を乗せてつづら坂を登り、ときには大人しくカメラ撮影にも応じている。