2024年11月23日(土)

個人美術館ものがたり

2009年10月20日

 あとはありとあらゆる泰西名画が再現されて、レンブラントの「夜警」、ジェリコーの「メデュース号の筏」、マネの「草上の昼食」、以下ダリ、ミロ、ピカソの「ゲルニカ」まで、教科書や美術全集で見るもののほとんど、総数1000点余の作品が展示されている。

 といっても、はじめはその版権を得ることからして大変だったという。美術陶板で再現した美術館といっても、実態がわからず、信用もされない。でもはじめの段階で、ヴァチカン、イタリア政府の許可を得られたことが大きかったという。あそこが承認したのなら、というので話の通りがよくなっていった。

システィーナ礼拝堂を再現したホール。ここならベンチに寝転がってゆっくりと天井画を眺めることも可能

 版権は原寸での陶板製作1点のみ、という契約で、空間ごと再生する大きなものでは、恐らく何千万円かに達するだろうと想像する。金額の犠牲は、本気度のあらわれでもある。完成の後、版権継承者が検品に来日して、みんなやはりその精度と事業規模には感動するらしい。はじめは半信半疑だったが、実物を見て、もっと良いポジ(原版)を渡せばよかったと反省する場面もあったという。

 陶板技術はその後も進化していて、システィーナ礼拝堂の天井画の角の部分など、当初は難しかった3次元曲面の焼き上げに成功し、開館10周年でようやく現地同様に完成したのである。

*作品画像は全て大塚国際美術館の展示作品を撮影したものです。

【大塚国際美術館】
〈住〉 徳島県鳴門市鳴門町鳴門公園内  〈電〉088(687)3737
http://www.o-museum.or.jp/
陶板による西洋名画の美術館。大塚製薬の創業75周年を機に「鳴門の地に恩返しを」と文化事業として計画され、12年の歳月を費やし1998年に開館。地下3階から地上2階に古代から現代までの作品が時代順に展示されるとともに、遺跡や教会などの壁画は内部の環境空間をまるごと模した臨場感を味わえる立体展示となっている。また額縁は作品の一部と考え、可能な限り時代考証して当時のものが再現されている。当日に限り再入館が許されているので、途中渦潮を見にちょっとした散策を楽しむこともできる。

〈開〉9時30~17時(入館は16時まで)
〈休〉月曜(祝日の場合は翌日)、1月は正月明けに連続休館あり、7・8月無休
〈料〉一般3,150円 大学生2,100円 小・中・高生520円

◆「ひととき」2009年10月号より

 

 


 

 

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