世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2015年11月27日

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 中国との関係は重要であり続けるが、東アジアの地図を見れば、台湾の戦略的重要性が分かる。すぐ北に日本、南にはフィリピンがある。台湾を囲む海は、重要なシーレーンである。

 中国が民主主義の台湾を脅し、国際的孤立に追い込んだり、中国に米国の台湾政策への梃子があると思わせたりすると、不安定化につながる。

 米国はこのダイナミクスを逆転させ得る。手始めに次のことをすればよい。台湾軍を合同、多国間演習に招待する。台湾が必要とする防衛装備品の移転を増やす。両国の閣僚のより頻繁で中身のある訪問を認める。台湾の国際機関におけるより実質的な役割を支援する。台湾のTPP加盟を支持する。

 要するに、米国は、台湾との関係を出来るだけ正常化すべきで、国内法上も国際法上も求められていない自主規制を止めるべきである。民主主義の台湾との関係の正常化は、キューバとの正常化と同様に、あるいは、それ以上に重要である、と論じています。

出典:Gary Schmitt,‘America’s Taiwan-China Hocus Pocus’(Wall Street Journal, October 19, 2015)
http://www.wsj.com/articles/americas-taiwan-china-hocus-pocus-1445274330

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東アジア情勢安定化目指し地固めを

 台湾との関係については、日中間でも米中間でも、対中関係正常化の際に中国との間で一定の了解がなされています。台湾とは政府間関係は持たないが、そうではない関係は維持されるということです。そのことから来る規制が、必ずしも全て「自主規制」というわけではありません。

 ただ、この大枠のなかで、何をするかについては、中国側の意向に従い、台湾との関係を制限してきたきらいがあります。前記了解には反しないのに対中配慮から自主的に規制してきたものは、対中関係上のコストはあっても、できるだけ止めていくほうがよいでしょう。この点、蔡英文総統候補の訪日を手厚く歓迎したのは良い対応だったと思います。

 共同軍事演習や中身のある閣僚訪問などは、これまでの経緯を踏まえると、急激なショックを与えるような措置ですが、国際機関での実質的活動支援、米国による武器供与はこれまでもしてきたことですし、拡大することが望まれます。TPP加盟については、台湾はWTO加盟国ですし、シンガポールなどとFTAも結んでいるのですから、台湾がTPP加盟を希望するのであれば、TPPのルールを受け入れる気があるのか、交渉すればよいでしょう。

 次の総統選挙では民進党が勝利する可能性が極めて高くなっています。その台湾との関係は、国交正常化時の了解に反しない限りにおいて正常化していくのが良いと思われます。

 中国の軍事力増強には凄まじいものがあります。今は東シナ海、南シナ海が大きな問題ですが、いずれ台湾が問題になってきます。中国得意のサラミ戦術に似たような形で、日米側も台湾における地歩を固めておく必要があります。それが抑止、安定につながります。事態がどうなるか、シミュレーションをして、それなりの準備をしていくことが望ましいです。

  
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