2024年4月20日(土)

WEDGE REPORT

2015年12月2日

サウジとシェールのチキンレース

 サウジはかねてよりOPEC単独での減産には反対の立場をとり、価格安定化には「非OPEC主要生産国の協調減産が必要」(今年4月、ヌアイミ石油相の発言)としている。

 10月には、ロシアも参加して、OPECと非OPECの8カ国がウィーンに集合し、協議の場がもたれたが、協調減産の提言には至らなかった。「今後5年間、原油価格70~80ドル/バレルに安定化させるには、サウジは200万バレル/日の減産を要す」「サウジは政策を変更する可能性が高い。政策の変更はリーダーシップの変更も意味する」(ニック・バトラー英キングスカレッジ客員教授)。

 油価の低迷が長引くなかで、サウジの方針転換に関する意見も聞かれるようになってきたのは、意外に米国のシェール革命がしぶといからだ。IMFも10月、シェールオイルの生産が底堅いことが明白であり、早期にサウジはシェア維持の方針を放棄するかもしれないとした。

 OPECは10月12日に発表した石油市場報告で、来年は米国の石油生産量が微量ながら2008年以来8年ぶりに減少すると予想した。

 シェールオイル生産業者は、原油安のなかで効率化を進めコストを削減し何とか凌いできたが、原油価格の崩壊はシェール革命を停止させ、シェール業界は成長から生存競争へのシフトを余儀なくされた。彼らの負債総額は2000億ドルともいわれ、借金の借り換えが困難な状況で、今後企業の統廃合が進むとみられている。

 果たしてOPECは高コストのシェールとの価格戦争に勝利したのであろうか。ノースダコタやテキサスでのシェールオイル生産の底堅さ(レジリエンス)をみれば、OPECの勝利は限定的といわざるを得ないだろう。

 シェール生産業者は油価が反転するまで、油井の完成を遅らせており、価格が戻れば、再びシェールオイルの生産が拡大する。

 産油国への逆風は他にもある。10月19日に中国の今年7~9月期のGDPが発表になったが、実質成長率が6年半ぶりに7%を下回った。

 世界第2位の原油消費国である中国での需要減が連想され、原油先物への重石となった。中国への大口の原油供給国であるロシアやサウジなどは、中国の輸入削減が直撃する。また、連邦準備理事会(FRB)による今年末もしくは来年に予定される利上げの決定は、リスク資産からの資金流出をもたらし、商品先物のひとつ原油先物市場では価格抑制に作用する可能性が高い。


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