世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2015年12月15日

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「責任ある利害関係者」期待されていたが…

 中国が論説の指摘するような役割をイランで果たすことは期待できません。

 中国の台頭に伴う大国としての国際責任については、かつて2005年に当時国務副長官であったロバート・ゼーリックが、中国が「責任ある利害関係者(responsible stakeholder)」になるよう要請して話題を呼びました。

 その後中国が「責任ある利害関係者」の役割を果たしてきたかどうかは分野によります。北朝鮮の非核化、イランとの核交渉では果たしてきたと言えます。最近になって地球温暖化に関し、役割を果たそうとしているかに見えます。世界経済については、リーマンショック後の不況対策では、世界を先導するような役割を果たしました。

 環境問題、テロ対策、疾病対策では、部分的に果たしているともいえます。

 しかし一方で、東、南シナ海では、まったく果たしていません。

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他国の立場顧みず自国の利益主張する中国

 要するに、中国は「責任ある利害関係者」の役割を果たすことを優先的に考えているのではなく、自国の利益を最優先させ、その利益に合致する、あるいは反しない限り、「責任ある利害関係者」の役割を果たすということです。

 自国の利益を最優先させるのは別に中国に限ったことではなく、およそ主権国家である以上、どの国もすることですが、東、南シナ海での行動が示すように、中国は他国の立場を考慮せず、強引に自国の利益を主張するところが異なり、それは「責任ある利害関係者」の態度とは相いれません。

 論説が中国に期待しているイランでの役割というのは、イランがヒズボラやハマス支持をやめ、より穏健な対外政策をとるように働きかけることですが、これが中国のイメージを向上させる以外に、中国にとってどのような利益があるのか定かでなく、中国が論説の期待に応える可能性は低いでしょう。

 たとえ仮に中国がその様な働きかけを行っても、イランがそれに応じる見込みは薄いと思います。今イランでは制裁の解除を契機として米国など西側の国との関係を改善しようとしているロウハニ大統領が、革命防衛隊をはじめとする国内強硬派の批判にさらされています。核交渉は支持したハメネイ最高顧問も、米国を厳しく非難し続けています。このような状況の下で、ヒズボラ支持などの対外路線を修正し、より穏健な対外政策に転換する可能性は低いと言わざるを得ません。

 要するに、論説は希望が先行しており、現実に根差した議論とは思えません。

  
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