チャイナ・ウォッチャーの視点

2015年12月16日

»著者プロフィール

 3. こうした崩壊説が何十年も当たらなくとも日本の固定のファンを獲得しているのは、リスクをきちんと分析しようとする健全なニーズもあるのだとは思うが、読者が崩壊を期待している部分もあるのではないかと感じている。その背景は、尖閣問題、歴史問題、反日運動に対する反発心、敵愾心と、日清戦争で芽生えた日本人の中国に対する優越感が、最近の中国の勃興で逆転しそうな状況における日本人のメンタルと関係があるのではないか。

 前者については、本当に反発心、敵愾心があるのであれば、孫氏の言葉を借りるまでもなくより冷徹に相手の事を分析すべきであり、何十年も当たらない予想はそろそろ何かがおかしいと考え直したほうがいいのではないか。後者については、優越感が確かにあったのであれば、それと劣等感は表裏一体のものであるはずで、優越感が劣等感に転化しそうな時に、中国の崩壊を期待する日本人の深層心理があるのかもしれない。

 いずれにせよ、優越とか劣等とか意識がある限り冷静な判断ができないのが人間の性だとすればそこに留まっているのはいいことではない。そもそも優越感がなければ劣等感もないはずである。今、日本人のメンタル面で調整が必要なのは、日中どちらが優越でも劣等でもなく、それぞれ違った国として認め合い、それぞれの違った生き方を模索し、その上で協力できるところは協力するという心持ちではないか。

情緒的な判断は避けるべき

 ⒋ この点は以下で紹介する中国の専門家たちの指摘であるが、日本を含めた西側のメディアが伝える中国経済の分析は、近代経済学のセオリーに基づいた分析が多いが、近代経済学が所与の前提とする状況が中国では整っていないために、違った前提条件でいくら危機を唱えても実態とのズレが出てきてしまう。これが中国経済が世界の予想、期待? に反して崩壊しない要因とも言えるのではないか。なお、欧米メディアで発表される分析は大変参考になるものがある反面、意図を持った巧妙なプロパガンダである場合もあるようなので注意が必要のようだ。

 ⒌ とは言え中国経済が深刻な諸問題を抱えている事実には変わりがない。一党独裁から起こりやすい政府の腐敗、貧富の格差、民族問題、環境問題、労務コストの上昇、元切り上げ圧力、産業高度化への課題、実質的には公定相場制故の歪みの蓄積、国営資本への利権と富の集中、リーマンショック後の大盤振る舞いの後遺症などなど挙げればきりがない。

 一方で、楽観要因もある。なんだかんだ言ってもこうした難局面を乗り越えてきた中国共産党の政策運営能力、これまでの高度成長で蓄積した富、圧倒的市場規模、まだまだハングリー精神を持った高度教育を受けた人材層、他国に依存することなく独立した軍隊を維持することによる国際政治的な牽制力(結局、これがあるから急激な元高を回避できているのではないか)、規制緩和、国有資本の独占権益の開放などまだまだある成長の糊代、などなどこちらも色々上げることができる。

 ⒍ こうしてみてみると我々ビジネスマンが注視しないといけないのは、崩壊するかしないか、いつ崩壊するかといった情緒的な判断ではなく、上記にあるプラスとマイナス面のバランスを見ながら中国経済がどのように推移するのかなのではないか。そもそも崩壊という定義も曖昧だ。日本がバブル崩壊で苦しんだような崩壊を中国が経験することはあり得るかもしれないが、フセイン政権の失脚でイランが崩壊するような事態を中国で想像する人はまずいないのではないか。一方で、中国は相当真剣に日本のバブル崩壊を研究し自らは日本の轍を踏まないよう細心の注意を払っている。

関連記事

新着記事

»もっと見る