Wedge REPORT

2015年12月21日

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想定を超える豪雨

鬼怒川の流域図と降雨状況 (注:2015年9月8日から10日の積算雨量  出所:国土交通省公表資料よりウェッジ作成)
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 いったい鬼怒川とその上空で何が起きていたのか。

 慶應義塾大学の岸由二名誉教授は「鬼怒川の流域の形は上流が広く下流が狭い。上流に降った豪雨が“水だるま”のように下流へと落ちていった」と説明する。

 決壊前日の9日10時過ぎに愛知県知多半島に上陸した台風18号は、同日夕刻に温帯低気圧にかわった。関東南部では積乱雲が連なる「線状降水帯」が発生。関東平野を北上して栃木県で雨を降らせた。鬼怒川上流域には24時間あたり600mmを超える、数百年に一度の豪雨が降り注いだ。

 鬼怒川堤防は「百年に一度の洪水を流せるよう」(関東地方整備局水災害予報センター長の津久井俊彦氏)に整備されていた。今回の豪雨は、はるかに整備基準を上回っていた。

 気象庁気象研究所予報研究部第三研究室長の加藤輝之氏は「線状降水帯は複数条件が揃うことで発生するが、地球温暖化の影響で条件が揃いやすくなり、発生頻度は高くなる」と指摘する。

 線状降水帯が増えれば今回のような豪雨が起こる可能性も高まる。前出の岸氏は「今回のような豪雨が、江戸川、荒川、多摩川、相模川などの上流域に降れば、都心でも大規模な水害の起きる可能性は高い」と警鐘を鳴らす。

常総市が非難判断の目安としている鬼怒川の水位の変化(注:茨城県川島水位観測所における鬼怒川水位の経過 出所:国土交通省公表資料よりウェッジ作成)
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 常総水害の1カ月半後の10月27日。東京都の江東5区(足立区、墨田区、江東区、葛飾区、江戸川区)の区長が初の「江東5区大規模水害対策協議会」に出るため、江戸川区に集まった。「常総市の水害があって、広域避難の実現に温度差のあった東京都23区内の意識が統一されつつある」(東京都総合防災部計画調整担当課長の福田孝由氏)ことを示す動きだ。

 協議会の座長を務める多田正見・江戸川区長は「荒川がはん濫する場合、事前に、かつ広域で区民に避難してもらう必要がある。ハザードマップはあるが、具体的にどう避難させればいいか、思い描けない」と苦悩を語った。

 江戸川区は三方を東京湾、荒川、江戸川に囲まれ、陸地の7割が満潮位以下のゼロメートル地帯になっている。街の両端は堤防に囲まれ、中に溜まる雨水や下水を人為的に排水し続けなければ存在しえない“水中都市”だ。

 荒川や江戸川が決壊すれば2週間は水に浸かる。避難所や3階建て以上の建物をあわせても、区民68万人のうち収容できるのは32万人程度だ。江戸川区防災危機管理課長の高橋博幸氏は「事前に区外へ避難してもらわなければいけないが、江東5区約260万人で検討しなければ実現できない」と頭を抱える。都や国が主体となって、水害対策を検討して欲しいのが本音だろう。

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