海野素央のアイ・ラブ・USA

2016年1月27日

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海野素央 (うんの・もとお)

明治大学教授 心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08年~10年、12年~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年と12年米大統領選挙で研究の一環として日本人で初めてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。激戦州南部バージニア州などで4200軒の戸別訪問を実施。10年、14年及び18年中間選挙において米下院外交委員会に所属するコノリー議員の選挙運動に加わる。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。中西部オハイオ州、ミシガン州並びに東部ペンシルべニア州など11州で3300軒の戸別訪問を行う。20年民主党大統領候補指名争いではバイデン・サンダース両陣営で戸別訪問を実施。南部サウスカロライナ州などで黒人の多い地域を回る。著書に「オバマ再選の内幕」(同友館)など多数。

 では、クリントン支持者はトランプ候補をどのようにみているのでしょうか。

クリントン支持者からみたトランプ候補

 ドリス・ブライルズ(61)

 「有権者は典型的な政治家を望んでいません。だからトランプは人気があるのです」

 アイリーン・グリーン(59)

 「トランプは、不法移民を不満のある有権者のスケープゴート(身代わり)に仕立てています。アメリカは人種のるつぼです。しかし、トランプはヒスパニック系を排除しようとしています。共和党はトランプに脅威を感じているのではないでしょうか。共和党はトランプに対処できていません」

クリントン陣営のバッジ(右から各選挙区のチームリーダーがつけるバッジ、活躍したボランティアの草の根運動員がつけるバッジ、学生のクリントン支持者がつけるバッジ、一般の有権者及びスタッフがつけるバッジ)

 クリントン陣営の標的となっているリン・リードさん(56)の家を訪問しましたが、不在でしたので夫が対応をしてくれました。彼は、トランプ候補と1992年米大統領選挙に出馬した大富豪ロス・ペロー(無所属)を比較して語ったのです。

 「トランプはロス・ペローのようです。ただ、ペローは選挙の途中で撤退し再度出馬しましたから、私はトランプの方が真剣な候補者だと思います」

 バーバラジョー・バッケンハワー(61)

 「トランプは単純に考える有権者に訴えています。彼は単純な解決策を求める有権者から支持を得ているのです」

「クリントン選対の仲間たち」(アイオワ州デモイン・クリントン選対)

 リサ・ラーブス(48)

 「トランプは根拠ないことを主張します。彼は共和党を分断しています」

 スーザン・ブランチ(68)

 「トランプが大統領になったら、私はカナダに移ります」

 レイモンド・スムダ(51)

 コミットメントカード(約束カード)に署名をしてくれたスムダさんは、トランプ候補についてこう語りました。

 「トランプはアメリカとメキシコとの国境に壁を作ると主張していますが、非現実的です。アメリカで生まれた不法移民の子供を追い出そうとしています。彼は憲法を変えようとしているのです」

 スザーン・ターナー(74)

 ターナーさんは、08年民主党候補者指名争いでオバマ候補(当時)ではなくクリントン候補を支持し、今回の米大統領選挙においても同候補を強く押している筋金入りのクリントン支持者です。トランプ候補がクリントン候補の夫であるビル・クリントン元大統領の女性問題をほじくり返している点に関して、ターナーさんは次のように言い切りました。

 「トランプの妻は3人目です。トランプはビル(クリントン)を批判できる資格はありません」

パソコンにクリントン支持のステッカーを貼り選挙運動をするインターンの学生(筆者撮影@アイオワ州デモイン・クリントン選対)

 USAトゥデイとサフォーク大学による共同世論調査(15年12月2日-同月6日実施)によれば、トランプ候補の女性における好感度は27%でかなり低い数字です。戸別訪問の際、「トランプは、女性の権利について気にかけていないので支持していません」ときっぱりと言う18歳の女子高校生がいました。クリントン候補はトランプ候補を性差別者だと厳しい口調で非難し、同候補が女性の敵であるいうメッセージを発信しています。第3回「クリントン候補の異文化連合軍」で説明しましたが、クリントン候補はそのメッセージを拡大し、共和党全体が女性の敵であるという意識を有権者に植えつけようとしています。 

アイオワ州デモインにある歴史博物館で開催されたクリントン候補のイベント会場で、コミットメントカード(約束カード)に署名を求める運動員。クリントン陣営は、600名の参加者から210枚の署名入りのコミットメントカードを回収した。すでに署名が済んでいる有権者もいた(筆者撮影)

 その狙いはどこにあるのでしょうか。マルコ・ルビオ上院議員(共和党・フロリダ州)に対する対策なのです。共和党幹部が望んでいると言われているルビオ上院議員が共和党候補者指名争いを勝ち抜き、女性でマイノリティ(少数民族)のニッキー・ヘイリー知事(共和党・サウスカロライナ州)を副大統領候補に指名した場合、クリントン候補は女性票を奪われ、異文化連合軍の枠組みを崩される可能性が一層高まるからです。クリントン陣営は、トランプ対策と同時にルビオ対策を講じているのです。

 トランプ候補について、「女性の権利を気にかけない」に加えて「恐ろしい」「危険だ」という声も複数のクリントン支持者から聞きました。明らかに、トランプ候補はテロや不法移民を利用して恐怖を煽って、支持を獲得しています。仮に、トランプ候補が共和党候補者指名争いを勝ち抜いた場合、クリントン候補はトランプ候補こそが恐怖であると強調し、その根源をテロと不法移民から同候補に置き換える選挙戦略をとってくるでしょう。

クリントン支持者の声

 国務長官在任中に、私的メールアドレスを使って公務を行っていた問題で信頼を失っていたクリントン候補でしたが、第1回民主党テレビ討論会及び、ベンガジ問題下院特別委員会での公聴会後に戸別訪問をしたところ、支持者は同候補に自信を取り戻していました。

クリントン候補(iStock)

 レベッカ・ダフィー(29)

 「(民主党)テレビ討論会を観て、ヒラリーに自信を持ちました。ヒラリーは争点について熟知しています」

 スーザン・ブリーン‐ホルド(57)

 「私は(民主党)テレビ討論会のヒラリーのパフォーマンよりも、ベンガジに関する公聴会での彼女の答弁に好印象を持ちました。彼女は自制があり、冷静でまるで大統領のようでした」

 キャセリーン・サンプソン(35)

 「(民主党)テレビ討論会の前は、どの候補を支持するのか決めかねていましたが、今回の討論会(第1回)を観てヒラリーに決めました」

 ロバート・キーラー(58)

 クリントン陣営の標的となっているキーラーさんの家を訪問すると、驚いたことに彼は妻のキャティーさんと一緒に、家の横に止めてあるトレーラーハウスの中で生活をしていたのです。キャティーさんがトレーナーハウスの入口でその理由を説明してくれました。

 「私たちの家を見てください。家を修理するお金がありません」

 続けて、クリントン支持の理由を語ったのです。

 「ビル(クリントン)は経済を立て直しました。ヒラリーも経済を回復させます。それに対して、共和党は経済を悪化させると思います」

 夫のロバートさんは、クリントン候補とオバマ大統領を比較して次のように述べました。

 「ヒラリーは、オバマと違って経験が豊富です。彼女なら議会と一
緒に仕事ができます」

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